アート引越センター株式会社(大阪府大阪市)のシンクタンクである『0123引越文化研究所』は、このほど「転勤(引越の伴う人事異動)に関する調査」の調査結果を発表しました。その結果、転勤者に対する「赴任手当」「引越費用」の支給額が、1999年の調査時と比較して大きく減少していることが分かったそうです。
調査は、東京、大阪、名古屋、福岡に本社または支店・営業所を持つ、従業員300人以上規模の企業で、転勤業務を担当する総務・人事担当者322人を対象として、2022年12月~2023年1月の期間にインターネット上にて実施されました。
まず、「年間の人事異動の実施回数」を聞いたところ、「毎年2回」(29.2%)、「毎年1回」「毎年3回以上」(いずれも23.0%)となり、1999年の調査と比較すると、「毎年3回以上」(46.4%)が23.4ptも減少しており、年間の人事異動の頻度は減少傾向であることがうかがえました。また、「人事異動の最も多い月」については、「4月」(68.0%)、「10月」(36.3%)が特に多い結果に。
次に、転勤者に対し「赴任手当を支給している」と答えた企業は、「単身世帯」が71.4%、「家族世帯」が67.7%で、その平均額は、単身世帯が「約9.3万円」(1999年調査時:約10.4万円)、家族世帯は「約13.1万円」(同21.2万円)でした。
同様に、「引越費用を支給している」と答えた企業は、「単身引越」が70.2%、「家族引越」は69.3%で、平均額は単身引越が「約11.4万円」(同約16.9万円)、家族引越が「約17.3万円」(同約41.3万円)となり、いずれも1999年(調査対象381社)の調査時から大きく減少していることが分かりました。
続いて、「転勤者への支援策」について聞いたところ、91.3%の企業が「支援策を実施している」と回答。具体的には「赴任旅費」(59.0%)、「単身赴任手当」(47.8%)、「家賃補助」(47.2%)、「社宅・寮の提供」(45.7%)といった回答が挙げられました。
また、「転勤に関する特例制度」ついては、52.5%の企業が「設置している」と回答。具体的には、「介護特例」(28.6%)、「育児特例」(27.6%)、「出産特例」(24.2%)、「結婚特例」(20.5%)などが挙げられたそうです。
さらに、「転勤者を選ぶ際に家族構成は影響していますか」と聞いたところ、71.7%の企業が「影響している」と回答し、「既婚者よりも未婚者」(60.2%)、「子どもがいない人」(37.2%)が優先されやすいことが分かりました。
続いて、「転勤者を選定する際に、どれくらい本人の希望や意思を反映していますか」と聞いたところ、44.8%の企業が「反映している」と回答し、1999年調査時の22.6%と比べて約2倍に増加。なお、「会社都合を優先」と答えた企業は、23.7ptの減少となっていたそうです。
また、転勤に伴う社員からの相談事が「ある」と答えた企業は72.0%で、「転勤先の住居問題」(48.7%)が最多であったものの、1999年調査時の75.1%から大きく減少。代わって、「仕事内容」(2023年46.1%、1999年14.9%)、「職場環境」(同44.0%、同8.4%)などの増加傾向がうかがえたといいます。
次に、「転勤に対する社員の反応」について聞いたところ、「ネガティブな変化」は31.0%、「ポジティブな変化」は28.3%となり、転勤をポジティブにとらえる社員も一定数いることが判明。また、「社員自ら希望する転勤の数」については、「変わらない」(41.6%)、「減ってきた」(23.3%)、「増えてきた」(22.9%)という結果になりました。
さらに、「転勤の辞令をきっかけに退職した社員」の存在については、「多い」(8.7%)と「たまにいる」(48.1%)を合わせて56.8%と、6割弱が転勤の辞令をきっかけに退職していることが明らかに。また、51.5%の企業が「転勤の有無は、新卒・中途等の採用活動に影響している」と回答したそうです。
2023年春の「転勤者数」について聞いたところ、2022年春と比べて「増える」と回答した企業は22.7%だったの対し、「減る」と回答した企業は13.3%となり、全体的にはやや増加傾向に。また、「今後の転勤者数の増減」については、「増える見込み」が22.0%に対し、「減る見込み」は16.7%となり、全体的にはやや増加傾向であることがうかがえました。
最後に、「転居を伴う転勤の制度や内容」について「見直す予定、または既に見直した」と回答した企業は37.9%。また、「今後の転勤における赴任手当や引越費用の支給額」については、「増える」と回答した企業は24.5%、一方、「減る」と回答した企業は10.8%と、全体的にはやや増える傾向がみられたそうです。