【紅麹問題】「健康食品」は安全とは限らない かねてより指摘される誤解…豊田真由子「正確な情報発信を」

豊田 真由子 豊田 真由子

小林製薬の「紅麹サプリ」による健康被害が問題となっています。摂取後に5人の方が亡くなり、入院者数は114人との報告がなされています(3月29日時点)。

当該の紅麹サプリは、「機能性表示食品」であり、こうした製品について、「安全性や効果について、『国のお墨付き』がある」と思って選んでいる方も多くいらっしゃるのではないかと思います。しかし、「機能性表示食品」は、国が安全性や機能性を審査したものではなく、あくまでも事業者の責任において表示をしているものになりますが、制度に関するこうした適切な情報提供が十分ではないようにも思います。

今回の健康被害について、現時点では、当該製品摂取との因果関係は不明であり調査中(※)」ということで、今後の迅速な解明が待たれるところです。今回の健康被害は、「予定しない成分(プベルル酸?)」に起因する可能性があり、本来の製品のままであれば健康被害は生じなかった可能性もありますので、本稿は、本個別事例ではなく、今回注目されている「健康食品」や「保健機能食品」について、かねてより指摘されている問題点をお示しし、消費者の方々の正しい理解と選択に資することを目的としたいと思います。

ポイントは、以下のとおりです。

・因果関係の立証前に、行政処分が行われているのはなぜか
・報告・公表までに時間を要したことについて
・「健康食品」「保健機能食品」とは
・「健康食品」に関する懸念

なお、ほとんどの食品(健康食品及び一般食品)は、もちろん「安全」であり、「健康食品」、「保健機能食品」により健康の維持・増進が図られているケースも多いと思いますので、そうした点についても偏りのない報道や理解が大切であると思います。

因果関係立証前に行政処分が行われているのはなぜか?

現時点で、「当該紅麹サプリと健康被害の因果関係は認められていない」状況であるにもかかわらず、国が「健康被害のおそれがある」と認定し、自治体が廃棄命令などを出していることに疑問を持たれた方もいらっしゃると思います。不利益な行政処分は、本来、当該処分を受ける理由が明確な場合に限って、行われるものだからです。

これは、食品衛生法が、「一定の危害が発生している場合には、科学的な根拠が十分に証明されていなくても、リスクを回避・最小化するための措置を取る」という考えを取っていることによります(これを、化学物質や環境問題では「予防原則」といいます)。

食品衛生法6条で「人の健康を損なうおそれがあるものを販売等してはならない」と規定しており、その「おそれ」がある時点で、消費者を守るために、廃棄や回収などの命令を出せるようにしているということになります。

   ◇   ◇

<食品衛生法上の措置>
厚労省(又は自治体)が、当該食品を『人の健康を損なうおそれがあるもの」と認定(6条)
→(厚労省又は)自治体が、廃棄や回収などの命令を事業者に出す(59条)
→厚労省又は自治体が、工場等に立入検査(28条) (⇐今ここ)
→場合によっては、営業停止等の行政処分(60条)
→場合によっては、3年以下の懲役又は300万円以下の罰金(81条)

   ◇   ◇

なお、他の各メーカーが、小林製薬の紅麹(同社は製造する紅麹原料の8割強を、他社に販売)を、色付けや風味付けなどで使用している食品について、自主回収(※食品衛生法上、命ぜられた回収ではない)をしていますが、一般論を言えば、「成分が濃縮されたサプリメント」と「一般の食品」は、含まれる成分の量が大きく違いますので、今回、サプリメント以外の、紅麹を少量使っているだけの食品を自主回収しているのは、科学的な見地から真に必要なことかどうかは議論の余地があるとは思います。ただし、消費者心理と昨今のリスクコントロール重視の観点からは、そうならざるを得ないだろうとも思います。

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