「健康食品」に関する懸念
そもそも、「健康食品」については、消費者庁や食品安全委員会等より、以前から下記のように、「『食品だから安全』と思ってしまう、過剰摂取、サプリは成分が濃縮されている、病気の人はより作用を受けやすい、健康被害に対する公的な救済制度が無い」といったことが指摘されています。
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【「健康食品5つの問題」(消費者庁)より抜粋】
・「健康食品は食品なので過剰摂取しても安全」と考えて、効果を実感できない人が自己判断で過剰摂取する。
・多様な品質の健康食品が消費者の自己判断で利用され、健康被害の正確な実態はよく分かっていない。東京都福祉保健局の調査(※)によると、健康食品によって身体の不調を感じた人は利用者の4%程度で、下痢や腹痛、発赤や発疹、身体のかゆみなどのアレルギーと思われる症状が多いと報告されている。その他、肝機能や腎機能に障害が起きたという報告がある。
(※)令和5年度「都民の健康と医療に関する実態と意識」(東京都保健福祉局)
・健康被害に関係する健康食品の多くは、サプリメントといわれている錠剤・カプセル状の製品で、その理由としては、医薬品と誤解して病気の治療目的に使われること、また、特定の成分が濃縮されているため、日常食べている食品よりも身体への作用が強くなり、望まない影響が出やすくなるからと推察。
・健康被害の症状が重篤になる事例として、医薬品との飲み合わせが特に問題。特に病気の人は体の機能が落ちているため摂取した成分の有害な作用を受けやすく、健康食品と医薬品を併用すると、医薬品が効きにくくなったり副作用が出やすくなったりする場合がある。
・国が安全性や有効性を審査して承認した医薬品・ワクチンには、適正に使用して重大な健康被害が生じた場合、医療費の給付等の救済の仕組み(医薬品副作用被害救済制度)があるが、健康食品にはない。
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【内閣府・食品安全委員会からの指摘】
※「『健康食品』は安全とは限らない~委員長らが異例の呼びかけ 」(2023年8月17日)より抜粋。字数の都合上、一部文末を、文意を変えない範囲で修正
・「健康食品」は、医薬品と違ってその効果は限られたもので、健康を害することもあるのに、そのような情報は消費者の目に触れにくく、効果への期待だけを大きくしやすい状態に置かれている。
・品質管理の問題点。医薬品は薬機法に基づき一定の品質が保たれているが、サプリメント型の健康食品は、医薬品によく似てなんとなく信頼できそうな外見だが、品質管理は企業任せである。
・天然・自然・ナチュラルでも、安全ではないものは多数ある。たとえば、市販のジャガイモでさえも、ソラニン・チャコニン類を微量含んでいるが、量が少ないので、症状は出ない。ところが、栽培や保管が適切でなければ、含有量は増え、食中毒につながってしまう。「摂取量」を考えることが大事。
・食品は通常、栄養成分とともに多様な化学物質を含み、重金属や自然に生成される毒性物質なども含有する。しかし、適切に生産・管理された食品を常識的な量、食べるのであれば、それらの摂取量は少なく健康被害を起こすこともほとんどない。一般的な食品は、いくら体によいと言われても食べられる量に自ずと限界があり、例えば納豆を、毎日、何百g、何千gとは食べられない。しかし、「健康食品」の多くは、成分の抽出や濃縮が施されていて、サプリメントはとくに、味やにおいもないため、簡単に多量を摂りやすいようになっている。
・一部の物質は、長期の大量摂取によるリスクが学術論文等で指摘されている。たとえば、野菜などに含まれるβ—カロテンは栄養成分で、がんや心筋梗塞などの心血管疾患の予防に効果があるとされてきたが、喫煙者がサプリメントとして長期、大量摂取したところ、肺がんの発生リスクを上げた、と報告されている。セレンや鉄、ビタミンA、ビタミンD、カルシウム、アスコルビン酸(ビタミンC)など、さまざまなサプリメントで、健康被害や長期投与試験でむしろリスクが上がったという結果が報告されている。
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私は、決して「健康食品」をネガティブに捉えているわけではありません。ご自身の状況にあったものを、適正な量・方法で摂取することで、健康の維持・増進に寄与することも多くあるでしょう。ただ、人々の「健康でいたい、長生きしたい」といった願いに付け込んで、効果への期待だけを大きくするようなことはフェアではないと思いますし、やはり、どんなものも、消費者お一人おひとりが、正確な情報に基づいて、正しい理解の上に、購入し、適正に摂取をする、ということを可能とするような、事業者、国、メディア等の対応が、大切だろうと思います。
亡くなられた方のご冥福を祈り、健康被害に遭われた方にお見舞いを申し上げ、そして、皆様が、医薬品・健康食品・一般食品を、適切に選び、利用し、そして、最適な効果を得て、心身ともに健康に過ごされますように。