報告・公表までに時間を要したのはなぜか?
小林製薬が、健康被害を把握してから公表するまで、時間を要したことについて、「当該製品が原因であるか分からず、原因究明に時間がかかってしまった」と説明されました。
確かに、因果関係が不明な中で公表や自主回収をすることには一定の抵抗感があると推察します。しかし、原因究明に当たって様々な調査を行っている間であっても、行政に対して相談や情報提供を行い、対応を協議することはできたはずです。
このことや、3月29日の厚労省と小林製薬のそれぞれの記者会見の噛み合わなさ(小林製薬が「意図しない成分は不明」と言っている最中に、厚労省から「小林製薬から『プベルル酸と同定した』との報告があった」と発表)などを見ると、元厚労官僚、元衆院議員の経験からの気付きの点のひとつとして、小林製薬は、行政・政治とのかかわりがほとんどなかったのだろうな、と思います。
普段から、すぐ話ができるパイプがあれば、今回のようなことは通常考えられず、そうすれば少なくとも、この2カ月の間ずっと、消費者の方が、リスクを知らずに摂取し続けるということは、なくて済んだのではないかと思います。
「製薬企業」といっても、内資と外資、そして、内資の中でも、先発医薬品を扱う会社と、ジェネリックや健康食品、日用品を製造する会社では、行政・政治との関わり方が、全く違います。
もちろん、癒着のようなことは言語同断ですが、国民・消費者を守るといった観点からも、事業者と行政・政治との、国民の利益に資するための適切な連携というのが、ある程度必要だろうとも思う次第です。
「健康食品」「保健機能食品」とは
さて、すべての飲食物のうち、医薬品以外のものが「食品」で、食品には「一般食品」と「健康食品」があります。さらに「健康食品」には、国が定めた安全性と効果に関する基準などに従って機能性が表示されている「保健機能食品」(①特定保健用食品、②機能性表示食品、③栄養機能食品)と、それ以外の「その他健康食品」とがあります。
▽(1)保健機能食品
「保健機能食品」の中には、対象の成分、安全性や効果の根拠の考え方の点で異なる「特定保健用食品」、「栄養機能食品」、「機能性表示食品」の3種類があります(「食品表示基準」(平成27年内閣府令10号)2条1項9号~11号)。
【特定保健用食品】
いわゆる「トクホ」と呼ばれるもので、安全性及び健康の維持増進に役立つ効果について国が審査し、消費者庁長官が保健機能の表示を許可している食品で、「許可マーク」が表示されています。ただし、国は摂取する量と摂り方や期間など、限られた条件内でのデータを確認しているのみですので、規定された量や方法の通りに摂取することが求められます。
【機能性表示食品】
事業者の責任において、科学的根拠に基づいた安全性や機能性などの情報を、販売前に消費者庁長官に届け出て、機能性を表示したもの。国が、安全性や機能性を審査したものではなく、あくまでも事業者の責任において表示をしている、ということになります。
【栄養機能食品】
人での効果の科学的根拠が認められている栄養成分(ビタミンなど)を一定の基準量含む食品で、事業者の自己認証により、国が定めた栄養機能が表示されているもの。
「機能性表示食品」は、経済成長戦略の一環として2015年に導入された制度で、経済面からの規制緩和要望に対し、厚労省としては、安全面での懸念があり慎重な意見がありました。所管は内閣府(消費者庁)ですが、いったん何か問題があれば、「食品」ということで、すべて食品衛生法の問題として、厚労省が対応を迫られるという図式になっています。
▽(2)その他健康食品
健康食品のうち保健機能食品以外のもので、一般にサプリメント、栄養補助食品、健康補助食品、自然食品などの名称で呼ばれます。「その他健康食品」は、「保健機能食品」のような機能をパッケージに表示することはできません。