諦順住職 あるとき、小児病棟に入院されている子どもがいる親御さんからこんなことを言われました。「いま、ベッドの横にお守りがぶら下げてあるんですけど、もっと子どもが喜ぶようなお守りはないですか?」。それを聞いて、うちのお守りは「がん封じ」とはっきり書いてあるので、そうではなく、動物とかのお守りやったら、もっと親しみを持ってもらえるんやないかと。それで、鳥や犬のお守りをこれまで作ってきたんですが、昨年のスーパー猫の日(2022年2月22日)の前に、ふと「六猫」と書いて「むびょう(無病)」と読むな、と思いつき、6匹の猫をデザインした「無病守」を販売したんです。それをSNSで告知したら、驚いたことに2万アクセスくらいいただいて、当初用意した500個は2時間半で完売しました。今もこのお守りは人気で、病気の猫のために購入され「おかげさまで元気になりました」という方も中にはおられます。
眞照さん 犬猫の保護活動は20年ほど前からやっています。現在は主に毎月第2日曜日に「京都 縁の会」という保護団体の譲渡会をお寺で開催しています。会のメンバーと協力し、これまでたくさんの犬猫と新しい飼い主さんとのご縁を繋げることができています。
私が保護活動を始めたころ、主人から言われたことがあるんです。「あんたは人のためにようやってはる。せやけど、時々それを取り返そうとしてるときがある」って。それを言われたとき、自分が情けなく、恥ずかしくなりました。自分が何かをしてあげたんやから、相手からも何かしてほしいと見返りを求めていたんですよね。犬猫にはそれがないでしょう。ただ純粋に今を生きていて、こちらが愛情を持って接すれば、なんの打算もなく純粋に愛を返してくれます。人間である自分もこうありたい、こうあるべきやと。それは保護活動を通じて、犬猫たちが私に教えてくれたことです。
いろいろと自分が手を尽くして、保護した犬猫に新しい飼い主さんが見つかり、犬猫も飼い主さんも幸せになっている。その姿を見るだけですごく心が満ちる。見返りなんかいらない。幸せな姿を見るだけで幸せ。そして、出会ったことや大変だったことも、やがて「ありがとう」へと変わっていくー。これこそお釈迦さまの言っている教えの一つなんですよね。このことに気づき実践できたなら、人生や物事は必ず好転していくはずなんです。生きている限り、煩悩はありますよ。だけど、それをコントロールできるのも人間。なかなか難しいですけど、心を寄せ、気付き、感謝する、そんな豊かな波動で生きていきたいものです。
【寺院名】「因幡堂平等寺」
【住所】京都府京都市下京区松原通烏丸東入因幡堂町728
*「京都 縁の会」のホームページhttps://kyotoennokai.wixsite.com/ennokai