増水した溝の壁につかまっていた子猫 通りかかった女子高生に助けられ宮司の家族に ひっそりとしていた神社に奇跡が起きた

うちの福招きねこ〜西日本編〜

西松 宏 西松 宏

長崎県諫早市にある久山年(くやまとし)神社は、本田孝裕宮司(53)の手彫り消しゴムはんこによる可愛らしいデザインの御朱印で有名だ。なかでも2月の「猫の日」と8月の「世界猫の日」前後に頒布され、初穂料の一部が保護猫団体に寄付される「さくらねこ御朱印」は、猫好きの御朱印コレクターの間で毎年注目を浴びている。神社の社務所隣にある自宅では、本田宮司の飼い猫、キジ白の「あずき」(オス、8歳)と三毛の「おもち」(メス、1歳)の2匹が暮らし、あずきは看板猫として参拝者をもてなしている。あずきとの出会いや御朱印のことなどについて、本田宮司に話を聞いた。

本田宮司(以下同) あずきと出会ったのは8年前の夏。その日は台風の翌日で、当時、お手伝いに行っていた高城神社(諫早市内)そばにある幅1メートルほどの溝が増水し、私はその光景を見ていないのですが、生後1カ月ほどの子猫が、流されないよう溝の壁に必死でつかまり「ニャーニャー」鳴いていたんだそうです。通りがかりの女子高生がその子猫を発見し、レスキュー隊を呼んで無事救出。おそらく台風で母猫とはぐれてしまったのかもしれません。一命をとりとめたその子は健気で、とても可愛く、飼い主も見つからなかったため、私が引きとって家族の一員に迎えました。

ここ(久山年神社)は431年前に創建された古い神社で、地元の方々に大切にされてきたものの、以前は認知度が低く、参拝者はほとんどいなくてひっそりとしていたんです。なので、ここだけではやっていけなくて、高城神社でお手伝いをさせてもらっていたわけですが、転機が訪れたのは元号が平成から令和に変わったときでした。

当神社でも即位の礼の記念御朱印を限定で頒布したところ、朝から夕方まで1時間待ちの行列ができるほど、大勢の方々がやってこられました。その後も、定期的に様々な種類の御朱印を発行し、少しずつお参りにきてくださる方々が増えていったんです。

あずきは社務所の隣にある自宅内で完全室内飼いをしています。なので、社務所や境内にはいませんが、「会いたい」とのリクエストがあれば、できるだけ家から社務所へ連れてくるようにしています。家族に対してはツンデレですけど、知らない人の前ではおとなしく、なでなでやだっこも全然嫌がらないんですよ。御朱印集めも猫も好きな方にとっては「猫ちゃんに癒してもらえるなんて」「幸せが倍になった気分」と喜んでもらっています。

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