「一棟入魂」をモットーに、戸建てや店舗の設計施工、リフォームなど地域密着の家づくりを手がけている鹿児島市の「株式会社盛洋(もりひろ)建設」。会社1階の応接室では、代表取締役・川﨑啓二さん(37)、慶子さん夫婦の飼い猫、茶白の「レモン」と「チョキ次郎」(ともにオス)、黒猫の「クロネ」(メス)の3兄弟(2歳)が暮らし、お客さんらを「おもてにゃし」している。「いつか猫を飼いたい」と思っていた啓二さんは、ある日、仲良し3兄弟の子猫を引き取ってきた。猫嫌いだった慶子さんはびっくりしたが、今では3匹は慶子さんや会社にとって、いないのが想像できないほど愛おしい存在に。どんな経緯があったのか、夫婦に話を聞いた。
啓二さん 小さいころは実家に猫が2匹いて、冬になると僕の布団の中に入ってきて甘えたり、膝の上に乗ってきたりして可愛がった思い出があります。以来、機会があればいつか猫を飼いたいとずっと思ってたんです。
慶子さん 夫は独身のころから「猫を飼いたい」ってよく言ってました。一方、私は子どものころから犬が好きで、ある時、犬の散歩をしてたら野良猫が「シャーッ!」と襲ってきたことがあり、それ以来「猫は怖い」というイメージしかなくて…。ずっと猫と接するのを避けてきました。はっきり言って、猫は嫌いだったんです。
啓二さん 一昨年(2021年)の5月、お客さんの会社の倉庫で、野良猫が赤ちゃんを3匹産み、「そういえば川﨑さん、猫好きだったよね?」と声をかけてくれたんです。その時は、結婚10年目でようやく新居を建てたばかりだったし、妻は猫嫌いだし、猫を飼うのは難しいです、と返事してたんですが、とりあえず見に行ってみたんですよ。倉庫の段ボールの中には、少しおびえた様子の3兄弟がいました。その子たちを見た5秒後には、僕が引き取ります、と返事をしていました。お客さんはまさかそうくるとは思ってなかったようで「えっ?」とびっくりされて。「それじゃあ、どの子にする?」と聞かれ、3匹とも、と答えると、再び「ええっ?」と(笑)。妻もきっと驚くと思ったけど、やがて必ず、猫の魅力に気づいてくれるはずと信じていました。
慶子さん 見に行くだけで、まさか引き取ってきたりはしないだろうと思っていたら、子猫を連れて帰ってきたので、えっ、嘘でしょと。それも3匹も一緒に!それで当時、夫婦仲はかなりざわつきましたよね(笑)。ただ、子猫たちが家にやって来て、子どもたちはすごく喜んでるし、私も折れて、じゃあ1匹だったらいいよ、残りの子たちは責任もって飼い主さんを探してね、と夫に言ったんですよ。すると夫は「兄弟を引き離すなんて可哀想」といって譲らないんです。
啓二さん すごく仲のいい兄弟だったので、3匹一緒じゃないとだめだと。引き離すなんてできないです。そもそも、あとから増やすことは考えていなかったし、もしあとから新しい子を迎えたとしても、先住猫と仲良く過ごせるかわからないですし。兄弟一緒が一番うまくいくと思ったんです。
慶子さん 当時の男性社員さん2人も「犬は好きだけど猫はちょっと…」と戸惑っていて、私を入れて社内は反対3vs賛成1だったのですが…。夫の気迫はすごかったです。「会社の1階の応接室で飼う」「絶対3匹一緒」「世話は全部僕がするから迷惑はかけない」って。まるでゲーム機をねだるときの子どもみたいでした(笑)。それで、3匹は応接室で暮らすことになったのですが、反対だった社員さんたちも、だんだんと子猫の可愛さにやられてしまい、「さっき餌、あげときましたよ」とかいうようになって(笑)。私自身もまた、仲の良い3匹と毎日接するうちに、小さいころからずっと抱いていた「猫イコール怖い」との先入観や思い込みが崩れていき、逆に子猫たちにメロメロになってしまったんです。