「ブラッド・ピットさん入洛」。こう表現した京都新聞のツイートが話題になっています。「インパクトがすごい さすが京都」「なんとも味わい深い文字列」「戦国大名みたい」といった反応もありました。「入洛」は歴史用語っぽいですが、京都では今でもよく使われている言葉なんです。
きっかけは23日にハリウッド俳優のブラッド・ピットさんが京都に来たことでした。この日、ブラッド・ピットさんは映画のプロモーションのため新幹線で京都に降り立ち、JR東海京都駅構内で駅長とあいさつを交わし、サインを残しました。その後はJR二条駅(中京区)近くにある映画館で試写会に臨みました。
京都駅での様子を伝える動画を添付した京都新聞のツイートが「【動画】ブラッド・ピットさん入洛」でした。24日付京都新聞紙面の朝刊の見出しも「ブラピ入洛」でした。
そもそも「入洛」とはどう読むのでしょう。二つの読み方があります。「じゅらく」と「にゅうらく」です。「広辞苑第7版」によると「じゅらく」は「京都に入ること。もと貴人の入京について言った。にゅうらく」とあります。一方、「にゅうらく」は「京都に入ること。じゅらく」と書かれています。
「入洛」は現代の京都でもしばしば使われます。京都市のホームページを調べると、頻繁に用いられていることが分かります。今年6月、京都市産業観光局が発表した「観光客の動向等に係る調査」では冒頭部分に「観光客の定義」として「観光客とは、観光目的だけでなく、ビジネス、買い物、イベント、観劇、スポーツ、友人・知人訪問等の目的で入洛した人を指し、市外在住で通勤、通学以外の目的で入洛した人全てを含みます」と一つの文章に「入洛」が2回登場します。
また、今年6月15日の門川大作・京都市長の会見でも「入洛観光客」という言葉が使われていることが公表されている会見要旨から分かります。
一方、京都新聞では「入洛」はどのように使われてきたのでしょうか。2021年の1年間では時代小説を含め15件、2020年の1年間は21件でした。
2021年の用例を見ていると、衆議院の解散・総選挙があったため与野党党首が京都で演説した際に「入洛」という言葉が用いられています。ほかにもパーク&ライドを考えるシンポジウムで「車による入洛は削減できる」との発言があったようです。
ではそもそも「洛」という言葉はどういう意味なのでしょう。先ほどの「広辞苑」を再び見ると、「(1)中国の川の名。(2)(洛陽が後漢以後、数王朝の都だったことから)都。特に京都をいう」と書かれています。
京都では現在でも「洛」の字を見ることが多くあります。京都市西京区には洛西ニュータウンと呼ばれる地域があり、西京区洛西支所があります。ほかにも洛中小(中京区)、洛央小(下京区)、洛風中(中京区)、洛友中(下京区)など多くの小中学校の名称に使われています。
ツイッターでも「何が問題なのかなとじっくり読んで行ったら、『入洛』って言葉そのものってことか」「京都では“洛”の字はよく使うかな」などの反応もありました。
「入洛」という言葉は京都では今も生きている言葉なんです。知っといておくれやす。