「京都に来て最初にガッカリしたのはこれ」 小説にもなった“あの門”は、昭和な遊具のすぐそばに

竹内 章 竹内 章

有名だからと現地に行ってみると、あれれ…そんな失望から誰が言い始めたか「がっかり名所」というありがたくない称号。諸説ありますが、日本三大といえば札幌市時計台、はりまや橋(高知市)、オランダ坂(長崎市)、世界に目を向ければブリュッセルの小便小僧(ベルギー)、マーライオン(シンガポール)、コペンハーゲンの人魚姫像(デンマーク)がよく言われます。そして千年の都、京にも…。 

イカリング〄(@ikaring63036919)さんが「京都に来て最初にガッカリしたのはこれ」と公開した画像の場所はとある公園。昭和テイストあふれるの滑り台のそばに石碑があり、「羅城門遺址」(らじょうもんいし)と刻まれています。小説の「羅生門」を想像したユーザーが、そのギャップに共感したのでしょうか、2万5千のいいねがつきました。 

羅城門は、794年に遷都された平安京の真ん中を南北に走るメインストリート・朱雀大路の南の端の大門であり平安京の正門でした。「羅城」とは都の城壁を意味し、唐の長安に倣っています。羅城門の大きさは左右33メートル、奥行8メートルで二重閣瓦屋根造。816年の大風で倒壊した時には再建されましたが、980年の暴風雨で損傷してからは修理されることなく荒れ果てるままだったとされます。

京都市歴史資料館のサイト「フィールド・ミュージアム京都」によると、石碑は1895(明治28)年、平安遷都千百年紀念祭の事業の一つとして建てられました。796(延暦15)年の創建以来、位置が不動とされた東寺の南門を基準点に計測して、九条通の南端の位置を定め、さらに計測して朱雀大路の中心である羅城門の中心を決めたとあります。考古学的には羅城門の遺構はまだ発見されていないそうです。

なお芥川龍之介の小説「羅生門」は、今昔物語集巻二十九の「羅城門上層ニ登リテ死人ヲ見シ盗人ノ語」を素材にして、羅城門の楼閣上における生と死を描いています。また、ベネチア国際映画祭で最高の栄誉であるグランプリを獲得した。黒澤明監督の映画「羅生門」(1950)は、芥川の小説「藪の中」をもとにしています。イカリング〄さんに聞きました。

―第一印象は

「衝撃でした。知名度があり、京都の街の原型ともいえる平安京の入り口なので、何らかの形で保存されているか再築されているだろうと勝手に思い込んでいたので。でも、京都に住んでいると、史跡のほとんどは街に埋もれていることに気づき、羅城門のように石碑や説明が整備されていることがありがたいのだと思うようになりました」

―歴史や時代の積み重ねの上にある、と

「史跡址でレポートを書いたり世界遺産や国宝を通りぬけてバイトに行ったりといった生活を送っていると麻痺してしまいそうですが、外国人に話しかけられたり観光客に道を聞かれたりすると「ああ、京都に住んでいるんだなあ」と。近所の建設現場から皿が出土して工事が止まったという話を聞くと、積み重ねられてきた歴史ともに今自分も歴史上の一つのレイヤーの上に生きているのだと実感します」

―そんな京都の見どころを

「ほどよく都会でほどよく自然があり街なかにも郊外にもまんべんなく観光地があるのが京都の魅力だと思います。有名な寺社仏閣だけでなく市街地の近代建築や琵琶湖疎水などの産業遺産にも目を向けていただけるとうれしいです」

―がっかり名所として、羅城門遺址が注目されました

「今回の投稿は京都在住のフォロワー向けのつもりだったので反響が想像以上で驚いています。京都には膨大な数の史跡があり、そのすべてを観光地として整備するのは不可能なので必然的に「がっかり名所」が生まれてしまいますが、羅城門遺址は生活の中で歴史を感じることができる京都らしい場所になっているかなと思います。ぜひお立ち寄りください!」

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