コロナで「首都圏脱出」企業が過去最多 移転先として北海道に熱視線

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新型コロナウイルスの感染拡大で在宅勤務が定着するなか、本社など主要拠点を都市部から地方に移転・分散する動きが急速に進んでいます。

帝国データバンクが実施した「首都圏・本社移転動向調査(2021年)」によると、2021年に首都圏(東京・神奈川・千葉・埼玉)から地方へ、本社または本社機能を移転した企業は351社に上り、過去最多を更新しました。また、首都圏からの移転先で最も多かったのは「大阪府」の46社でしたが、「北海道」が33社で、コロナ前の2019年の7社から約5倍に急増したといいます。

2021 年に首都圏と地方間を跨いだ「本社所在地の移転」が判明した企業(個人事業主、非営利法人等含む)について、同社が保有する企業概要データベースで業種や規模が判明している企業を対象に分析した結果です。

2021年に本社移転を行った企業は、全国で2258社に上りました。前年(2020年)から1割超の増加となり、1990年以降で2001年(2299社)に次ぐ過去5番目の多さとなりました。このうち、首都圏から地方へ、本社または本社機能を移転した企業は351社と判明。前年から2割超の大幅増加となりました。転出企業が300社を超えるのは2002年以来19年ぶりで、これまで最多だった1994年の328社を大幅に上回り、過去最多を更新したそうです。

コロナ禍で首都圏一極集中の事業リスクが顕在したことに加え、テレワークが普及・浸透したことでオンライン上でも業務可能となった企業では、首都圏におけるオフィス維持のメリットが薄れるなど、前向きな移転需要も重なったといいます。

2021年に本社を首都圏から移転した、または移転計画を明らかにした企業は、大手芸能事務所のアミューズ(東京→山梨県富士河口湖町)のほか、仏タイヤ大手の日本法人・日本ミシュランタイヤ(東京→群馬県太田市)、光学・電子製品向け材料部品製造のデクセリアルズ(東京→栃木県下野市)などがあるそうです。

一方で、地方から首都圏へ本社を移転した企業は328社で、前年から約1割増加し、2015年の335社に次ぐ2番目の多さだったといいます。その結果、2021年における首都圏の本社移転動向は、転出社数が転入を23社上回る「転出超過」になりました。首都圏で転出超過となるのは2010年以来11年ぶりだということです。

首都圏からの移転先で最も多いのは「大阪府」の46社で、次いで「茨城県」(37社)となりました。大阪府への転出社数は2年連続で増加しています。一方で3位の「北海道」は33社で、コロナ前の2019年(7社)から約5倍に急増し、過去最多に。人口密度の低さなどから、本社機能や研究施設の受け皿として北海道が注目されていることも背景にあるといいます。

また、「宮城県」(19年比+10社)、「岡山県」(同+9社)、「兵庫県」(同+7社)などはコロナ前から特に増加。「福岡県」(20社)、「宮城県」(14社)、「広島県」(10社)なども、首都圏からの転出先として過去最多(広島県は最多タイ)となりました。なお、首都圏への移転元では、最も多いのは「大阪府」の67社で、次いで「愛知県」(26社)、「北海道」(23社)、「茨城県」(22社)などが続き、前年から大きな順位の変化は無かったそうです。 

首都圏から転出した企業の業種は、「サービス業」が156社で最多。また、同業種としては2017年の114社を大幅に上回り、過去最多を更新しました。このうち、ソフトウェア開発やベンダーなどソフトウェア産業が23社あり、サービス産業全体の1割超を占めています。次いで「卸売業」(60社)、「製造業」(51社)が多かったものの、卸売業の割合(17.1%)は過去最低、製造業(14.5%)も19年(11.8%)に次いで低い水準だったそうです。

首都圏からの転出企業を売上高規模別にみると、最も多かったのは「1億円未満」(176社)で、多くが小規模な企業でした。なかでも、5000万円未満の小規模企業、設立間もないスタートアップの割合はコロナ前を大きく上回る水準で、10年前(2011年)を大幅に上回りました。研究開発型のスタートアップを中心に、研究施設の拡大などを目的として首都圏外に移転するケースがみられ、10億円規模の中堅企業も、コロナ前を上回る水準だったといいます。

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同社では、「首都圏をめぐる本社移転の今後は、テレワークなどコロナ禍に対応したビジネス環境が定着するか、コロナ禍前に戻るかに左右されるとみられ、引き続き企業の『脱首都圏』の動きが続くかは不透明な状況下にある」とする一方で「多様な働き方を取り入れる企業が多いIT産業やスタートアップをはじめ、比較的移転が容易な小売業やサービス業といった企業では、首都圏外を有力な候補地として移転の検討や計画策定などの動きが活発化しそうだ」と説明。「首都圏から移転した企業の多くが、移転先にもともと事業所や工場などの拠点があるほか、創業の地など所縁のある地へ凱旋したケースが多い。対して、新たな土地に進出する形での本社移転は少ないなど、本社移転の内容には偏りもみられる。受け入れ側となる地方都市では、首都圏など都市部と比較しても遜色のない通信網の整備が、企業誘致を軸とした地域活性化を図る上での重要課題となる」とも述べています。

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