不登校の子どもに寄り添い、退職を決断した母、夫の無関心に募るモヤモヤ…すれ違う夫婦が“わかり合う”ために必要なたった1つのこと【産業医が解説】

長澤 芳子 長澤 芳子

この春から小学2年生になる子どもがいる30代の女性・Aさんは、子どもの不登校をきっかけに仕事を続けられなくなったことに、今も悩みを抱えています。

入学直後から学校にうまく馴染めず、週に一度は休むようになった子ども。対応のため、Aさんは正社員から同じ職場のパート勤務に切り替えて働いていました。しかし、夏休み明けから子どもは完全に登校できなくなり、Aさんもついには退職せざるを得ない状況に追い込まれます。

夫と相談のうえで仕事を辞める決断をしたものの、Aさんは心の中に複雑な思いを抱えています。変わらず働き続ける夫に対する感謝はある一方、「なぜ自分だけがキャリアを諦めなければならないのか」という憤りや、育児が落ち着いた後も働きたいという気持ちがあるのです。

このモヤモヤした気持ちはどうしたらよいのでしょうか。産業医でメンタルヘルス事業をおこなう野卓朗さんに話を聞きました。

ー夫婦で納得のいく答えを見つけるためには、どう話し合えばよいのでしょうか。

お互いに本当の思いを冷静に伝えることです。そのために、もう一度考えてほしいことが、自分自身の本当の気持ちです。誰かの目や周りの意見を一旦脇に置いて、親として、女性として、あなたが本当はどうしたいかを考えてみましょう。

気持ちを整理すると、すぐに伝えたいと思うかもしれません。しかし、伝えたい思いをぐっと堪え、相手の思いにも耳を傾けてみましょう。相手の考えや気持ち、お子さんに対する思い、今後どうしたいと思っているのか…。相手の気持ちを理解することも大切です。

そして、気持ちや思いを伝える前に「あなたが話してくれたことは〇〇ということで合ってる?」と確認してみてください。もし認識が違っているようであれば、相手が納得するまで、聴いて確認することを繰り返しましょう。

ーなかには「子どものことは妻に任せる」という考えで、聞く耳を持たない方もいると思いますが、そのようなときはどうすればいいのでしょうか。

まず相手がなぜ「子どものことは妻に任せる」と考えているのか、確認してみましょう。男性の中には、子育てに関する知識を得る機会や場面がなく、子どもとの関わり方に不安や苦手意識を持っている方もいらっしゃいます。人は、理解されてから理解するものです。そのため、自分が「相手から理解してもらえたな」と感じたときに、はじめて相手の話しを聴く準備ができます。まずはしっかり相手の考えを聞いてみましょう。そして、他人はコントロールできません。たとえば「父親にも子育てに参加してほしい」と伝えても、なかなか思い通りにいかないでしょう。「あなたと一緒に子育てができたら嬉しい」など、自分がどう思っているかを伝えることを意識しましょう。

ー子どもが不登校であることに引け目を感じ、なかなか相談したくてもできない方も多いと思いますが、どこか相談場所はあるのでしょうか

お子さんが学校に行かないことで、悩む方はあなただけではありません。各自治体ごとにさまざまな支援がおこなわれており、文部科学省のホームページでも紹介されています。

また民間の不登校についての情報サイト『未来地図』では、実際にお子さんが不登校の経験を持つ先輩ママが、不登校の知識や体験談まで、さまざまな情報を発信しています。受けられる支援情報や親の会の情報なども掲載されているため、ぜひ一度覗いてみてください。

今はお仕事をされていないとのことですが、お子さんも成長していきます。今すぐは難しいかもしれませんが、自分自身の生き方や働き方についても考えていけるといいですね。厚生労働省では、家庭と仕事の両立支援として「マザーズハローワーク事業」をおこなっています。情報提供だけでなく、相談にも乗ってくれるため、活用するといいでしょう。

▽文部科学省「不登校に関する地元の相談窓口」
https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/seitoshidou/06112214.html
▽未来地図
https://miraitizu.com/
▽厚生労働省「マザーズハローワーク事業」
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_21046.html

◆野﨑卓朗(のざき・たくろう)合同会社活躍研究所代表 「メンタルヘルス不調になった従業員が当たり前に活躍する会社を作る」をモットーに活動。産業医としての経験を活かし、一般の方向けに、医学的な話をわかりやすく伝えることを心がけている。

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