日銀の金融緩和政策の影響で、住宅ローンの超低金利が続いています。こうしたローンを組みやすい状況に加え、住宅ローン減税などの支援策も利用できることから、マイホームの購入を検討する方も多いのではないでしょうか。中には「タワマン」に代表される、都心での便利で快適なマンション暮らしに憧れる人もいるかもしれません。
しかし、首都圏のマンションの価格はここ数年高騰し続けています。不動産経済研究所によると、2021年10月に首都圏の1都3県で発売された新築マンションの平均価格は6750万円。昨年同月より10.1%上昇し、10月としては過去最高になりました。ただ6750万円という金額は平均であり、東京23区内などの人気エリアの高価格物件が首都圏全体の平均を押し上げているのが現状です。地域別では、東京23区が圧倒的に高価格の8455万円、神奈川県が5101万円、埼玉県が4698万円、千葉県が4288万円となっています。
現実的には世帯年収1400万円程度必要に
仮に人気が集中している東京23区内に8455万円のマンションを購入する場合、どの程度の年収があれば可能なのでしょうか。8455万円の物件を購入し、頭金1割と諸費用を現金で支払って、7500万円のローンを組むとして考えてみましょう。
大きな金額の借り入れを行う場合は、金融機関の審査に通るか否かがまず問題となります。収入等の基準が設けられている場合、これをクリアしなければ希望額が借りられません。収入基準は住宅ローンの種類や金融機関によって異なり、フラット35や財形住宅融資では、公表された基準(年間の返済額が年収の35%など)から判断されます。民間の住宅ローンは「年収の6~8倍」などを融資上限の目安にしているところや、職業や勤務先、勤務年数などから総合的に判断するところもあります。
仮にフラット35の基準で判断するなら、年収770万円程度から7500万円のローンを組むことが可能です。しかし、これは借り入れの上限ギリギリの額なので、実際に返済するとなると、月々の負担が過度に大きくなり、生活を圧迫することになってしまいます。
では、どの程度の収入があれば無理なく返済できるのでしょうか。一般的に住宅ローンを組む場合、年間の支払額が額面年収の20%以内なら安心と言われています。この基準で7500万円のローンを組み、月々22.4万円ずつ返済するなら、無理なく組める年収は額面で1400万円程度からとなります。(※)
(※)返済期間35年、固定金利1.33%、元利均等返済、年間の支払額268万1328円として計算。
年収が1400万円を超える世帯の数は…
続いて実際に首都圏のマンションを購入できる世帯が、どれくらいあるのか見てみましょう。厚生労働省の「国民生活基礎調査」(2019年)によると年間の所得(※)が1400万円を超える世帯は全体の4.2%程度とごく少数です。こうした世帯の中には単身で高年収を稼ぐ層だけではなく、近年増加してきた「パワーカップル」と呼ばれる共働きかつ夫婦とも700万円以上の年収を稼ぐ層も含まれ、マンションのメインの購入者になっていると見られます。
(※)給与所得者の場合は額面年収、事業者の場合は年収から必要経費を差し引いた金額
また、収入が十分にあったとしても、50代で長期ローンを組む場合は引退後も同じペースで返済できるか考えておく必要があります。さらにハードな仕事をしている場合は体を壊したり、年収が下がったりしても無理なく返済できるのかという視点も必要です。このような条件も併せて考えると、東京23区のマンションを購入できる世帯は高収入かつ安定して働ける職場や資格がある、まとまった資産がある、親族からの援助が期待できる場合などさらに限定され、ごく一般の家庭が手を出すのは困難と言えます。
今後、住宅価格の高騰がどのくらい続いていくかはわかりませんが、専門家によっては、当面価格の上昇が続くのではという見方も出ています。