「倭文」…この名字、読めますか? 姓氏研究家・森岡浩氏が日本人の難読名字を紹介します。
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漢字と読みが全く対応していない超難読名字。古代に織物の生産を担当した倭文部に因む、かなり古い名字である。
『日本国語大辞典』によると、「倭文」とは古代の織物の一種で、梶の木・麻などで筋や格子を織り出したもの。読み方は「しづ」とある。そして、この「しづ」を織るのが「しづおり」であ、やがて「しつおり」「しとり」と変化し、「倭文」という漢字をあてた。
古代ヤマト政権で、この倭文を担当した技術者集団を倭文部(しとりべ)といい、各地に置かれて倭文を生産した。こうした倭文部のあったことに因む「倭文」地名は、鳥取県や淡路島など各地にある。
「倭文」という名字は、倭文部で働いていた人達の末裔が名乗ったものと、倭文部に因む「倭文」という地名の場所にあとから住んだことに由来するものの2つがある。
現在は栃木県に多く、「ひとり」と読むこともある。