「紡車」…この名字、読めますか? 姓氏研究家・森岡浩氏が日本人の難読名字を紹介します。
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兵庫県にある難読名字で「つむ」と読む。「紡ぐ」だけで「つむぐ」と読むため、名字からは「車」の読みか消えていることになる。
この名字のルーツは古い。古代、布をつくるために繊維に撚りをかける道具を紡錘(つむ)といい、弥生時代の遺跡からも発掘されている。
紡錘は、円形に穴のあいた「紡錘車(つむぐるま)」と、その穴に通す棒状の「紡茎(ぼうけい)」からできている。
この「紡錘車」に因むのが「紡車」という名字である。「服織部」が「服部」、「上毛野」が「上毛」となったように、漢字3文字の地名や名字などが2文字になる際には、中央の漢字が落ちることがあった。
そのため、「紡錘車」も中央の「錘」という漢字が抜け落ちて「紡車」となる一方、読み方では末尾の「くるま」が欠落したため、「紡車」で「つむ」と読む漢字と読みが対応していない難読名字となったものだ。