「交告」…この名字、読めますか? 姓氏研究家・森岡浩氏が日本人の難読名字を紹介します。
◇ ◇
一見「こうこく」としか読みようがないように見えるが、これで「こうけつ」と読む。岐阜県ではかなり多い名字で、とくに東部ではごく普通の名字といえる。この名字、もともとは「纐纈」であった。
纐纈氏は、源頼朝に仕えた盛康が祖という古い一族で、以来子孫は美濃国一帯に広がっている。そもそも、纐纈というのは古代につくられた絞染めの一種のことで、本来は「こうけち」といい、布の一部をくくって染めることから「くくり染め」ともいわれた。美濃東部には古くから「久々利」(くくり)という地名があり、これに「纐纈」という漢字をあてて、そこに住んだ人が「纐纈」(こうけち)を名字としたとみられる。
しかし、「纐纈」という漢字は難しい。画数が多くて書くのも大変なために、中央の部分だけで代用して「交吉」と書いたのが始まりだという。しかし、「交吉」だと「こうきち」と呼ばれてしまうため、「吉」に「ノ」をつけて「告」にしたと伝えるが、それでは「こうこく」になってしまうのだが…いずれにせよ、地元では「交告」は「纐纈」の省略形ということは浸透しており、「交告」と書いてふつうに「こうけつ」と呼ばれている。