「メーガン妃問題」が改めてあらわにした世界の分断<後編>

「明けない夜はない」~前向きに正しくおそれましょう

豊田 真由子 豊田 真由子

目次
#1 本題に入る前に
#2 王族の果たすべき責務
#3 人種差別問題
#4 階級社会
#5 旧宗主国と旧植民地

旧宗主国と旧植民地

アメリカは、イギリスから独立しました(1776年独立宣言、アメリカ独立戦争は、1783年パリ条約で終結)。

メーガン妃が英王室に迎えられたということは、米国民にとって「(旧宗主国の」英国の伝統と格式の象徴である王室に、(旧植民地の)米国民であり、かつ、黒人にルーツを持つ女性が受け入れられた」ということであり、画期的で大きな意味を持つものだったのだと思います。だからこそ、メーガン妃が、(客観的真実であるかどうかは別としても)、英国で「冷遇された」「人種差別的な扱いを受けた」、そして、それにより王室を去らざるを得なかった、ということは、もともとの期待や喜びが大きかっただけに、より一層の失望をもたらしたのではないかと思います。「結局のところ、どうせ私たちのことを見下しているんでしょ。」ということになり、今回の件が、米国の国民感情にもたらした傷は、実はかなり大きいものがあるように思います。

そういう意味では、偏向的な米メディアの報道と一部著名人の過剰な反応は、実は、そのこと自体が、米国と米国民にとって、大きなマイナスをもたらしている面もあるのではないかと思います。

この不条理な世界に解決を、と考えるとき、こうしたさまざまな溝のあまりの深さに茫然とするわけですが、少しずつではありますが、世界は変わってきています(後退もしながらですが)。

あきらめてはいけない。そう思います。

【注記】「黒人」という呼称は差別的なのではないかという議論がありますが、本稿においては、論点を明確にし分かりやすくすることと、近年の米国では、「黒人(Black)」という言葉を、奴隷制度以来不条理な人種差別という苦難を乗り越えようと、闘ってきた人々へのリスペクトを含意する言葉として使われることが多くあることなども踏まえ、「黒人」を使用しています。

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