一箱5000円のジャガイモも買ってしのいだ日々 餓死寸前の高齢者も…コロナ禍・ロックダウンされた上海で、日本人主婦が見たものとは

襟川 瑳汀 襟川 瑳汀

黒崎 だれだって外出先で一晩ロックダウンなんて目には遭いたくないですよね。だから、該当施設でロックダウンが始まると中の買物客はまだ施錠されていない出入り口から蜘蛛の子を散らすように逃げていくんです。それで警備員と買物客との間で大捕り物が始まる…。その様子はSNSなどで拡散されていました。子どもがモールの前庭で遊んでいる間に、買物中の親は施設の中に閉じ込められた映像も見たことがあります。子どもはドアの外で泣きわめいて、親は必死で「出してくれ」と叫んでいるんです。

  外出先でのロックダウンとは逆のパターンもありました。それはたとえば、子どもが学校に行っている間に、自宅のアパートの住人に陽性が判明するというようなことです。この場合、一度家に戻ったら疑感染扱いになり、陽性ではなかったとしても最低二週間は再登校ができなくなる。ではどうするかというと、家には戻らずにホテルに泊まったり、友人の家に厄介になったりするんです。わが家でもそうやって、よその子どもをしばらく泊めていたことがありました。

ワクチン接種キャンペーンも、外国人家族は対象外

--ゼロコロナ政策の間、ワクチンは打ちましたか。

黒崎 未接種です。上海市民は二度か三度は打ってると思うのですが、私たち家族のような外国人居住者は強制ではありませんでした。初期の段階ではワクチン量に余裕がなかったので、外国人に対してはワクチン接種プライオリティが低かったせいだと思います。また外国人は中国人の予防接種会場では接種できず、外国人専用の場所に予約を入れて行く必要がありました。接種のプロセスが少々面倒だったので、そのままだらだらと未接種で終わりました。 

 中国人向けには「接種すれば1リットルの食用油をプレゼントします」とか「この日に打ったら抽選でiPhoneが当たる」とか、接種キャンペーンはよくやっておりました。ですから中国人の友人からは、しばしば「プレゼントがもらえるんだからすぐに打ちにいけばいいのに」といわれましたが、そもそも外国人はキャンペーンの対象外だったんです。

 コロナで高熱を出すと、家族もろとも隔離施設みたいなところに連れていかれて療養することになります。それがホテルだったらまだいいのですが、タイミングや病状によってはコンテナや体育館を病室に改装したところに送られることもありました。上海市民はみな、そんなところに送られたら治療もろくに受けることができず、逆に悪化するのではないかと噂して恐れていました。

 住民が隔離されて空っぽになった家には保健所の係官が来ます。そして大量の消毒薬を散布して、家電といわず布団といわず部屋を水びたしにしていくんです。犬猫なんか飼っていたら、それはもちろん隔離先には連れていくことはできないから、放り出されて野犬化・野良猫化する。噂で聞いたことですが、上海がロックダウンされた時にはそうやって捨てられたペットが群れをなして道路を徘徊していたようです。

 先述したように私たち家族や、身近なところの友人知人はゼロコロナ政策期間中は罹患もしなかったし、ロックダウンで離れ離れになることもなかった。だから普通に生活しているぶんには、少なくとも表面的には平穏だったのですけれど、現実問題として「今日の新規感染者は×××名」とかどこそこでクラスタ発生とか、それでロックダウンになったとかいった情報は常に入ってきてましたからね。いつ自分たちにその災厄が降りかかってくるかと思うと気が気ではありませんでした。無駄な外出は控えて、すべての必要品はネットから購入するようになっていきました。

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