本日9月30日より、連続テレビ小説『おむすび』(NHK総合ほか)がスタートした。このドラマは、豊かな食材の宝庫、福岡県は糸島で暮らす主人公・結(橋本環奈)が、さまざまな出会いを経て「人の役に立つ喜び」に目覚め、栄養士を目指す物語。
「美味しいもん食べたら、悲しいことちょっとは忘れられるけん」
本日放送された第1回で結が、大事な帽子を海に落としてしまい泣いている男の子に向かって言った「美味しいもん食べたら、悲しいことちょっとは忘れられるけん」という台詞は、結にとって、またこのドラマにとっても大事なキーワードとなりそうだ。この台詞が生まれた経緯について、本作の脚本を手がける根本ノンジさんはこう語る。
「私はどんなドラマでも必ず『食べるシーン』を入れるんです。食べるという行為にはキャラクターと、その人の人生が出るんですね。『美味しいもん食べたら〜』の台詞は、常に私自身が思っていることです。悲しいことを完全に忘れられるわけではないけれど、美味しいものを食べたら、その一瞬だけでも忘れられる。この台詞が、作品の大きなテーマにもなっています」
栄養士は、人の一生に関わる仕事
さらに、主人公が栄養士を目指す物語にした理由も明かした。
「『食』は、私がずっとこだわってきたテーマです。私自身、朝ドラは好きで、視聴者としてよく観ていたのですが、これまでにも『ごちそうさん』(2013年後期)など、『食』をテーマにした素敵な作品がありました。そんな中、今までにない作品を作るにはどうしたらいいかと考えて、食べ物で人を元気にする『栄養士』というテーマが浮かんだ。栄養士さんって、人の人生の始まりから終わりまでにずっと関わる仕事なんですね」
「赤ちゃんが食べる市販の離乳食は栄養士・管理栄養士によって開発されています。子どもが小中学校に上がれば給食、大学では学食、就職すれば社食、これらのメニューを作るのも栄養士の仕事。ほかにもコンビニの商品やレストランのメニューを開発したり、入院患者のための病院食づくりも管理栄養士が指導しています」
「9年前に私の父が食道がんの手術で胃を切除して胃ろうになり、それから亡くなる直前まで、管理栄養士さんが本当に献身的にお世話してくださいました。そのとき『ああ、これはいつか栄養士の物語を描くべきだな』と。人の一生に関わる『栄養士』をテーマにした朝ドラ。これは他にない切り口なのではないかと思いました」
ドラマでは、結が神戸で阪神・淡路大震災の被災者となったこと、海の幸・山の幸の食材豊かな糸島で育ったこと、ギャル文化と出会って「ギャル魂」を胸にポジティブに前進することの大切さを知るなど、結という人間を形作るすべての経験が、やがて「食で人を元気にする」栄養士につながっていく様子が描かれるという。半年間、結の歩む道のりを、楽しみに見守りたい。