まるで「卒業アルバム」千手観音像1001体のお顔写真がずらり並ぶ「三十三間堂」の冊子、その意図は?

天草 愛理 天草 愛理
木造千手観音立像が国宝に指定されたことを記念して三十三間堂が編集発行した冊子「無畏」。1001体の観音立像の顔写真と名前を掲載している
木造千手観音立像が国宝に指定されたことを記念して三十三間堂が編集発行した冊子「無畏」。1001体の観音立像の顔写真と名前を掲載している

 「三十三間堂の全ての仏像のご尊顔が見られる本を買ったのだけれど、卒業アルバムでした」。

千体を超える千手観音立像で有名な「三十三間堂」(京都市東山区)の冊子が、ツイッター上で話題を集めている。購入者が、千手観音立像の顔写真が掲載されたページを撮影して投稿したところ、「134番さん、いいムードメーカー役の生徒さんだと思います」「千体全てが違うからこそのアルバム」などとコメントが寄せられた。どんな冊子でどういう意図で作られたのか、取材した。

 三十三間堂は、平安時代後期に創建されたが火災で消失し、鎌倉時代に現存の建物に再建された。堂内には1001体に及ぶ木造千手観音立像のほか、木造千手観音坐像や風神雷神像など実に1032体もの仏像がずらりと祭られており、建物と仏像の全てが国宝に指定されている。

 冊子「無畏」は、木造千手観音立像が国宝に指定されたことを記念して2018年に発刊された。それぞれの観音立像の配置図や風神雷神像などの仏像の写真を掲載し、三十三間堂の魅力を余すことなく伝えている。

 今回、注目を集めたのは1001体全ての観音立像の顔写真と名前を65ページにわたって紹介した部分。1973年から行われた保存修理の際に、1体ずつ白黒フィルムで撮影した写真を掲載している。

 ツイッター上の盛り上がりを見て、さっそく冊子を購入してみた。長方形の顔写真の下部に番号と名前が添えられており、思った以上に卒業アルバムそっくりだった。顔の輪郭や眉の形、目の空き具合、口の大きさなど、1体1体の顔立ちが違うことも「卒業アルバムっぽさ」を後押ししている。

 どのような意図で、こんな「卒業アルバムっぽい」冊子を作ったのだろうか。三十三間堂に話を聞いた。

 三十三間堂は、1001体もの観音立像を安置しているため、参拝者が全てを鑑賞することはなかなか難しい。取材に対応した担当者によると、職員らは以前から1体1体に名前を付けて呼んでおり、「国宝指定を機にここにおられる仏様が誰か知ってもらいたい」と考えたという。

 観音立像を巡っては「三十三間堂に来ると、この世でもう会えない人にもう一度、会うことができる」という言い伝えがある。修学旅行生が自分に似ている1体を探そうと躍起になる姿も見られるといい、「自分の気に入った仏様を見つけて縁を結んでもらえたら」という願いも込めた。

 ちなみに、個性豊かな1001体を職員らは見分けることができるのだろうか。担当者は「1001体もあると、すべて把握している人はなかなかいないと思います」とのこと。日々、接している職員らにとっても判別は至難の業のようだ。

 担当者は、冊子がツイッター上で評判になっていることを人づてに知ったとして「興味を持ってもらい、お参りいただけたらうれしいです。お寺は年配の方が集まるところというイメージがありますが、若い方にも来てもらえたら」と話していた。

 冊子は1500円。三十三間堂の売店で購入できる。

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