織田信長、徳川家康連合軍と武田勝頼軍が雌雄を決した長篠の戦いの模様を描いた『長篠合戦図屏風』に「一人だけRPGの初期装備の奴がいる」とインターネット上で大きな話題が巻き起こっている。
実際に屏風の画像に目を通すと、甲冑で完全武装した兵士たちの中、たしかに一人だけ青い着物しか着ていない超軽装の男が確認できる。長篠の戦いと言えばその規模だけでなく、鉄砲の大量導入で知られる合戦。弾丸の飛び交う戦場をこんな軽装で駆け抜ける男の姿に、ネット上では
「無課金勢やろ」
「賭けに負けた奴やろ 」
「当たらなければ問題ないとか言ってそう 」
「一撃離脱型やろな むしろ強キャラに見える 」
などとさんざんな賛辞が寄せられているわけだ。
いったいなぜこの男はこんな軽装で長篠の合戦に参戦しているのだろうか。 この謎に迫るべく、まいどなニュースでは『長篠合戦図屏風』を所蔵する徳川美術館のご担当者にお話をうかがってみた。
中将タカノリ(以下「中将」):この兵士が評判になっていることはご存知だったでしょうか。
担当者:存じませんでした。合戦図屏風について関心を持っていただけたことは嬉しく感じております。
中将:他の兵士が甲冑で防備している中、なぜこの兵士だけ軽装なのでしょうか。
担当者:合戦図屏風というものは大将を顕彰するために描かれるのが一般的で、画面には甲冑を着込んだ上級武士を中心に描かれるのですが、実際には軽装で戦に参加した人も数多くいました。おそらくこの兵士はそういった人たちの一人として描かれているのだと思います。
◇ ◇
戦国時代の合戦と言うといかめしい甲冑をまとった武士たちの姿を思い浮かべる方が多いと思う。しかし、実際に参加している兵士の多くは身分の低さや貧しさゆえに、この男のように軽装での戦いを強いられていたのだろう。事情を知ると、こんな時代に生まれなくて良かったと少しホッとした気持ちになった。
なお当記事の制作にご協力いただいた徳川美術館では現在、世界有数の漆コレクションと、夏休みにぴったりの鬼や妖怪の展覧会を開催中。8月末までに来館した小中学生全員に妖怪ブックと妖怪シールもプレゼントしているので、ぜひ訪れていただきたい。
特別展「漆 -徳川美術館珠玉の名品-」
企画展「怪々奇々 -鬼・妖怪・化け物…-」
【期間】開催中~9月13日(日)※詳細については徳川美術館ホームページをご覧ください。
【所在地】〒461-0023 名古屋市東区徳川町1017
【ホームページ】https://www.tokugawa-art-museum.jp/