「国鉄のころがうらやましい」というコメントをTwitterで見かけることがあります。国鉄を知らない筆者としては「国鉄、JRどちらが便利なのか」という疑問が思い浮かびました。そこで関西圏の列車本数を中心に国鉄とJRの利便性を比較してみます。参考資料は交通公社の時刻表(1986年11月号)とJTBの時刻表(2021年春号)です。
朝ラッシュ時に新快速が…ない!
まずは京阪神を高速に結ぶスターである新快速から。2021年春号を見ると、新快速は朝ラッシュ時も活躍していることがわかります。朝ラッシュ時になると12両編成の車内はビジネスパーソンや学生でいっぱいに。京阪神間だけでなく滋賀県や兵庫県西部の方にとっても朝ラッシュ時において新快速は欠かせない存在です。
「新快速は京阪神のスターだから、昔も朝から活躍していたのでは…」と思っていましたが、筆者の予想は甘かったようです。1986年11月号を見ますと、大阪駅発朝7時台、8時台において新快速は見当たらず、快速がやたらと目立ちます。
9時台になり、ようやく新快速を確認することができました。また夕ラッシュ時においても新快速の本数は多くありません。この頃の新快速は「日中時間帯の列車」という性格が強く、ラッシュ時は快速が主役だったことがわかります。なお朝ラッシュ時と夕ラッシュ時の一部快速は快速停車駅の須磨駅、垂水駅を通過していました。
本数少なすぎでしょ! 福知山線(JR宝塚線)
国鉄は列車本数が少ない都市近郊路線がたくさんありました。その最たる例が福知山線(JR宝塚線)です。福知山線は尼崎~福知山間ですが、JR化後に大阪~新三田間には「JR宝塚線」という愛称が付けられました。
主要駅の宝塚駅発上り列車(大阪、JR東西線方面)の停車本数を確認します。2021年春号を見ると、平日12時台に発車する上り列車は9本です。
1986年11月に福知山線は全線電化が実現し、大半の列車が電車になりました。さぞ列車本数が多いのかと思いきや、平日12時台の宝塚駅発上り列車は3本の普通列車のみ! これでも以前と比較すれば普通の列車本数は増えたことから、国鉄の長距離列車重視政策がよくわかります。
多数の急行列車が運行されていた国鉄時代
ここまでは国鉄の大敗北ですが、幹線でない路線にも優等列車を運行していた点は見逃せません。国鉄時代、姫路駅から岡山県津山駅を経て新見駅に至る姫新線には急行「みささ・みまさか」が運行されていました。
この列車は大阪~津山間は「みささ・みまさか」として運行。津山駅で切り離され、「みまさか」はそのまま姫新線を走り中国勝山まで。「みささ」は急行「砂丘」と連結し、因美線に乗り入れ、鳥取まで足を伸ばしていました。
現在の姫新線は急行列車はおろか快速列車もなく、すべて普通列車です。しかも姫路~津山間の直通列車は設定されず、姫路~佐用・上月、佐用・上月~津山、津山~新見のように事実上ぶつ切りになっています。
「みささ・みまさか」は高速バスの普及などにより、1989(平成元年)に廃止されました。現在の姫新線は兵庫県西部と岡山県を結ぶ路線というよりは地域輸送に徹した路線になっています。
一方、姫路近辺の列車本数が大幅に増加したのも事実。姫新線に限っては国鉄、JRどちらが列車本数が多く、便利かという問いに答えるのは難しいです。
このようにJRになり特に近距離列車の本数が増え、地域密着型輸送に力を入れてきたことがわかりました。とはいえ、社会情勢の変化を反映したダイヤになりつつある今日この頃。コロナ禍前のダイヤも歴史の一コマになるのでしょうか。