戦前の南満州鉄道や戦後の東海道新幹線、京阪神の特急電車など、さまざまな車両の座席に使われた「シート地」のみを集めた珍しい展示「鉄道車両内装の歴史展」が、大阪市中央区南船場3丁目の住江織物大阪ショールームで開かれている。
住江織物は、カーテンやじゅうたんなどインテリア用品を手がけるメーカーとして知られる。鉄道車両のシート地は「モケット」と呼ばれる毛織物の一種で作られることが多く、同社は創業間もない1896(明治29)年、国鉄の前身に納入したのを皮切りに、国内をはじめ旧満州(中国東北部)や朝鮮半島の鉄道のシート地を製造してきた。
会場では約50点を展示しており、このうち戦前の貴重な製品約20点はガラスケースに陳列されている。日本初の路面電車で京都市内を走った京都電気鉄道で使われたシート地や、南海鉄道(現南海電鉄)に納めた生地がある。さらに、三角形に似た局章が入った京都市電用や、みおつくしの市章が印象的な大阪市電用も披露。南満州鉄道に納入した製品や朝鮮総督府鉄道用のシート地も見ものだ。
戦後の製品約30点が収められた棚では、だいだい色に縦じまが特徴的な初代「0系新幹線」用や、高級感が漂う深緑色をした阪急の特急車両用などが存在感を放つ。
また、生地の実物展示はないものの、全国で走る豪華特急列車の車内に使われているシート地を写真パネルで紹介するコーナーもある。JR九州の「ななつ星in九州」やJR西日本の「トワイライトエクスプレス瑞風[みずかぜ]」、近鉄の「しまかぜ」、京阪電気鉄道のプレミアムカーなどの内装写真が掲示されている。
電車のシート地に焦点をあてた展示は住江織物でも珍しいといい、同社経営企画室の増田大輔さん(44)は「電車の裏方を担っている製品に関心を持ってもらえれば」と話す。会期は6月28日まで(日曜、祝日休館)だったが、好評のため8月下旬まで期間延長する方向。入場無料。