インドの感染爆発から、日本と世界が学ぶこと、すべきこと

「明けない夜はない」~前向きに正しくおそれましょう

豊田 真由子 豊田 真由子

水際対策は効果があるのか?

4月26日時点で、日本国内で、21件のインド変異株が確認されています。(空港検疫20件、国内事例1件)

以前から変異株への対応策として、「完全に海外との往来をシャットダウンして、一切ウイルスを国内に入れないようにすればいいではないか」という声があります。しかし、日本国籍を持つ人や永住資格を持つ人の帰国を拒否するわけにはいきませんし、加えて、駐在員とその家族や、留学生、ビジネス等の往来は行われています。例えば、本年3月の訪日外客数(永住者等を除く外国人入国者)は12300人、出国日本人数は28900人です。(日本政府観光局(JNTO))

では、「空港で検査をして、陰性であれば大丈夫ではないか」という点については、ウイルスの量がまだ少ない等、検査の精度の問題で、ウイルスに感染していても陰性となるケースが一定程度あります。つまり、現実問題として、ウイルスは、必ずすり抜けてしまうので、どのウイルスに対しても、水際対策というのは、完璧にはいかないものなのです。

ただ、もちろん、水際対策に効果が無いということではありません。万能ではない、ということであって、感染スピードを抑える効果等は確実にありますので、引き続きしっかり行っていくことが大切です。

その意味でいえば、実は日本は、これまで、まだインドを「変異株流行国・地域(※)」に指定しておらず、5月1日から指定されることが決まりました(4月28日決定。アメリカ(テネシー州など4州)とペルーも。)

4月3日から、新規感染者数はインドが世界一となって以来、急激な感染者増は、上記(1)のグラフの通りです。それなのになぜ、これまで指定されていなかったかというのは、「インド政府が、変異株の出現を認めていなかったから」といったことが言われます(「当該国が認めていないのに、一方的に変異株が出た国と決め付けることはできない」という理屈)が、しかし、少なくとも、感染者数の急増は公表されているわけでありますので、指定の枠組みはどうあれ、外交的な気遣いよりも、国民の安全安心を守ることを優先すべきではなかったかと思います。ちなみに、感染急拡大を受け、英、タイ、インドネシア等は、インドからの入国を禁止しました。

(※)現在、海外から日本に入国する者は、空港で抗体検査を受けて、陰性であれば、誓約書を取った上で14日間の自宅待機となりますが、事実上、自由に行動できてしまう状況にあり、他国の多くの例のように、しっかりと管理できる指定場所で、確実に待機させるべき、という意見も多いところです。

一方、「変異株流行国・地域」に指定されている国・地域からの入国であれば、抗体検査に加えて、検疫所が確保する宿泊施設での入国後3日間の待機とPCR検査が行われ、(上述のとおり、完璧ではないものの)より厳格な措置が取られます。現在は、下記の29か国・地域が指定されています。英国、南アフリカ共和国、アイルランド、イスラエル、ブラジル、アラブ首長国連邦、イタリア、オーストリア、オランダ、スイス、スウェーデン、スロバキア、デンマーク、ドイツ、ナイジェリア、フランス、ベルギー、エストニア、チェコ、パキスタン、ハンガリー、ポーランド、ルクセンブルク、レバノン、ウクライナ、フィリピン、カナダ(オンタリオ州)、スペイン、フィンランド。

なお、国外からだけではなく、国内でウイルスが変異していくことによって、新たな性質を持つ変異株が出現する可能性も、もちろんあります。ウイルスはヒトからヒトに感染するたびに、変異のチャンスを得ることになりますので、感染者が多いほど、新たな変異株が出現する可能性も高くなります。したがって、変異株を制御する有効な方法は、ウイルスを複製させないこと、すなわち、感染そのものを抑えること、といえます。

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