医療従事者だけど「ワクチンを接種しない」という選択 同僚たちが接種していく中で見えてきたこと

長岡 杏果 長岡 杏果

新型コロナウイルスの第4波到来が懸念される中、2021年2月17日から医療従事者を対象とした新型コロナワクチンの先行接種が始まりました。新型コロナワクチンの感染に不安を抱える一方、ワクチンの安全性を疑問視する方も多くいます。ワクチンへの副反応への正確なデータがない状況の中、ワクチンを先行接種する医療従事者は接種する・しないの決断を迫られているといいます。

今回取材を受けてくれた埼玉県在住のAさん(40代・医療従事者)は、医療現場における新型コロナワクチン接種への葛藤について話してくれました。

新型コロナワクチンは自己判断で…

Aさんは都内の病院で看護師として働くシングルマザーです。Aさんには17歳の子どもBさんがいます。日本での先行接種が始まる前、テレビでワクチンの安全性について疑問視する内容が連日報道されていたこともあり、Bさんはそのワクチンの副反応について「怖い」と話していたそうです。

それから数日後、Aさんは勤務先の病院から新型コロナワクチンを先行接種するかどうかの確認をされました。返事は3日以内にしてほしいといわれ、副反応が起きた場合、国による救済制度があると記載されたリーフレットを渡されました。

Aさんは医療従事者という立場や地域の感染状況を考えると接種しなければいけないという思いがある一方、副反応に対する不安もありました。接種した数年後、副反応が起こるリスクについては、世界中で誰一人として知る人はいないからです。

Aさんは職場から「接種はあくまでも任意であり強制するものではない」「しかし接種しないと決めた後はワクチンの数に限りがあるため、接種を希望しても受けることはできない」といわれたそうです。

接種しないという選択をした理由

AさんはBさんが1歳のときに離婚をしました。これまで16年間、Bさんのために一生懸命働いてきました。またBさんが大きくなるにつれ、自分の悩みを打ち明けたり、さまざまなことを一緒に乗り越えてきました。

AさんはBさんにワクチン接種を受けるか悩んでいると話したとき、Bさんから「接種しないでほしい」といわれたそうです。その理由は副反応のリスクや「お母さんや医療従事者が実験台になっているように見える」というものでした。

Aさんは「接種しないリスク」についても、医療従事者という立場からBさんに伝えたそうです。

17歳といえばもう自分の意見をしっかりと持っています。しかし、まだ子どもでもあります。Aさんは悩みましたが、接種することでBさんが長く不安を抱えてしまう可能性があることや、自分自身も接種自体に多少なりとも不安があることを理由に接種しないことを決意しました。

Aさんはその後、部署異動することに

Aさんは職場に接種しないことを伝えたところ、「医療従事者としてそれでいいのか」といわれたそうです。

周りの同僚が接種していく状況の中、Aさんは患者たちと接種する機会が少ない部署へ異動となりました。その際、異動の理由はワクチンを接種しないことによるものではないと説明を受けたそうです。

これはAさんにとっては本意なものではありませんでしたが、自身の感染リスクや院内感染を防ぐためには当然のこととして受け入れました。

Aさんの同僚の中には接種後、大きな副反応を起こした人はいないそうです。Aさんはワクチン接種を必要以上に恐れることなく「接種するリスク」と「接種しないリスク」の両方を知った上で、接種するかしないかを決めることが大切だと話してくれました。

未知のワクチンを接種する不安は、医師・薬剤師・看護師・その他の医療従事者であっても、皆同じです。そうした状況の中、「接種をしようと決断した医療従事者に感謝したい」ともAさんは話してくれました。

医療従事者は感染リスクにさらされる中、このような葛藤も抱えながら、日々新型コロナウイルスと闘っているとAさんから教えてもらうことができました。

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