全国初!京都市、全客室バリアフリー義務
京都市議会で先月、市内で新設、増改築される宿泊施設の事業者に全客室のバリアフリー化を義務付ける改正条例が全会一致で可決、成立した。
今後京都市内で建設される宿泊施設は、通路幅1メートル以上、室内での方向転換スペース、トイレ・浴室の出入り口の幅を75センチ以上などバリアフリー対応など全ての客室がバリアフリー対応義務付けとなる。一見とてもユニバーサルデザインな先進的取り組みではないかと受け止められているが、実はそうではない。
実質的な低価格ホテルお断り宣言?!
京都市は全面的に否定しているが、この制度の導入のきっかけは間違いなくホテルの新規着工抑制だ。ホテルの供給過多は、京都市の頭の痛い課題であり、出店規制に繋がる施策を早く打とうと考えてきた経緯がある。この制度が稼働すると、これまで大量に供給された宿泊特化型の低価格ホテルが実質的に建設できなくなる。最近のビジネスホテルの傾向は、客室面積を最低限にすることで宿泊単価を抑えたリーズナブルなホテルが好調に推移しているが、バリアフリー対応を迫る結果、一部屋当たりの客室面積が従来よりも大きくなり、小さい客室のホテルは作れなくなるのだ。これは巧妙なバリアフリーの名を借りた『低価格ホテルお断り宣言』なのだ。
本来、観光都市としてはお金持ちから学生まで幅広い方にお越しを頂くべきなのだが、今回の制度導入により客室面積は増えるが宿泊単価は上昇し、高級ホテルから低価格ホテルという多様なニーズに答えられないようになる。
現在はホテルが価格帯問わず充実しているのですぐに問題にはならないが、いずれ低価格ホテル需要が発生する可能性は否めず、そうなったとしても、あくまでバリアフリーを促進するという視点での取り組みであることから早々に緩和することも出来ず、いずれ大きな問題に直面する可能性は高い。
バリアフリーはホテルだけ、一歩出れば…
そして一番の問題は、バリアフリーを宿泊施設にだけ押し付けている点だ。
今回の条例案が「絶対的にユニバーサルデザイン都市を作りたい」という話ならそれでいい。しかし、そうではない。ホテルに規制を課すなら、ホテルの前の道路もバリアフリー対応にすべきであり、観光施設や商業施設も当然バリアフリーを義務化するべきだが、そういう議論は全くないのだ。結果、ホテルを出た途端、バリアフリー非対応の道路に直面し、観光地へ行くのも一苦労、観光地でももちろん苦労の連続となる。これでは、いくらホテルの総量規制ではないと言っても説得力がない。
行き過ぎたホテルの誘致、民泊の締め出し、簡易宿所の度重なるルール変更、そして今回の抑制政策と場当たり的に変化し続ける京都市の宿泊施設施策。関連事業者からは怨嗟の声が聞こえるが、そろそろ明確な方向性を示す時期に来ているのではないだろうか。