大阪に銭湯より安い1泊390円のホテルがあった 「やっていけるのですか?」スタッフを直撃

杉田 康人 杉田 康人

会社でハンバーガーにかぶりついていたちょうどその時だった。当サイトの編集長が近づいてきて、こう言い放った。「いま食べてるハンバーガーと同じ値段でホテルに1泊できるらしい、ちょっと見てきて」。私の主食であるマクドナルドのビッグマックは単品で390円。ということはホテル1泊390円ってことか、そんなアホな。真偽を確かめるため、現地に向かった。

JR、南海電鉄の新今宮駅西出口に隣接するビジネスホテルで、名前は「ホテルサンプラザ」。外観を見ると、とても390円には見えない。取材に応対してくれた運営会社の株式会社JUNONホテル事業部・角谷正樹さんに、まずは料金の確認をすると「はい、そうです」と答えが返ってきた。(ホンマやった)。ネットカフェや地元の銭湯(450円=大阪府)より安いやないか…。

実際に部屋や設備を見せてもらった。他のホテルチェーンと比べても遜色なく、キレイすぎると言ってもいい。部屋は3畳ほどと狭いが、テレビ・エアコン、ベッド、テーブルはもちろん、Wi-Fiも完備。トイレ・バスは共同だが、タオル、歯ブラシなどのアメニティーグッズも用意されている。男性大浴場女性専用浴場もあり、午前7時からチェックイン可能(チェックアウトは翌日午前10時)だ。

通常価格は1泊2000円だが、電話予約の上、同ホテル公式ツイッター(@hotel_sunplaza)の「1泊390円プラン」のツイートをリツイートし、フロントに提示するだけでOK。ただしこの破格料金はシングル初回1泊のみ、となる。

期間は2月28日まで。1月18日にツイッターで告知し、約6800件のリツイートがついた。現在までに約50人が「サンキュープラン」を利用した。角谷さんによると、興味本位で泊まる20~30代の利用客が多く「本当に390円で泊まれました!」「普通にいいホテル」との喜びの声が届いているという。

大阪の観光地・新世界やUSJにも至便な立地で、コロナ禍までは外国人観光客でほぼ満室だった。2020年3月ごろから利用客が減り始め、客室の稼働率が4割程度まで落ち込んでいる。緊急事態宣言の発出で、生活に困る人が多くいる中で「このままでは部屋を空けておくのももったいない。何かできることはないか」(角谷さん)とプランを立案し、大きな反響を呼んでいる。

プランの部屋数制限はなく、部屋が空いている限り対応する。ホテル側は受験生や就活生にも多く利用して欲しいと呼びかけるが、それにしても390円…。やっていけるのだろうか?仕掛け人の角谷さんに話を聞いた。

  ◇  ◇

――赤字にはならないのですか?

角谷:ベッドのシーツ代だけで…(苦笑)。テレビの報道などで、派遣切りに遭った人や生活困窮者が、ネットカフェに泊まられている状況を知り、何か役に立つことができないかと思い立案しました。ネットカフェのパーティションの中で身を縮めて寝るよりも、こういう所があるんだと知っていただくことが第一かと思いました。

――この値段に込めた思いは?

角谷:コロナはまだ続いていくと。部屋を余らせておくくらいなら、本当に困っている人の助けになればという思いです。会社的には0円にするわけにはいかないので、経費ギリギリ…赤字が出てもいいかという値段です。

――受験生や就活生に利用してほしいという呼びかけがありましたが、他にどのような方に利用してほしいですか。

角谷:コロナで仕事が無くなって、地方から大阪に仕事を探しに来られる人の拠点にしていただければ。経済的負担も少ないですし、面接場所へのアクセスも便利です。派遣で働く方が連泊されることも多いです。

――ホテルのいまの状況を教えてください

角谷:2度目の緊急事態宣言で、空室が増えてきました。外国人観光客をあてこんでいた周囲のホテルでは、稼働率が10~20%のところもあります。今回の390円プランは、ホテルのことを知ってもらういい機会。コロナが収束してから、ホテルに泊まってくれたりリピーターになっていただければ。ピンチをチャンスに変えたいと思っています。

――ところで…1泊390円は初回1泊きりなんですよね?黙って何度も利用される方も出てくると思いますが、確認とかはされるのですか?

角谷:そういう方もいらっしゃるかと。ただ、お客様にあまり細かいことは聞かないようにしております。本当に困っているだろうと…。

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