「その値上げ、疑義あり!」学食の価格改定を大学院生が理詰めで追及 店長の真摯な回答にも注目

黒川 裕生 黒川 裕生

大阪大学内にある図書館下食堂で一番人気のメニュー「天津麻婆丼」が値上げされたことに対して、値上げ前後の豆腐の数を根拠に鋭く疑義を呈した大学院生からの「ひとことカード」が注目を集めています。「統計では、ここ5年で豆腐の価格に大きな変動はないはず。それなのに値上げ後に豆腐の数が減っている。質が低下しているのではないか」と理詰めで迫る院生に、食堂側はどう答えたのでしょうか。

天津麻婆丼は、その名の通り、ふんわり卵の天津飯に餡と麻婆豆腐をかけた中華料理です。阪大生の“ソウルフード”として絶大な支持を得ていますが、2020年3月1日、499円から515円に値上げされました(いずれも税込み、他のメニューも同時に価格見直し)。食堂はその後、新型コロナウイルスの影響でイレギュラーな営業が続いたため、多くの学生にそのことが認知されたのは10月に入ってからだったといいます。問題の「ひとことカード」が掲示されたのは12月下旬のことでした。

そしてTwitterに「院生が天麻の豆腐の量と値段について考察したのを生協にマジレスしてて草」という𝒀.𝑲𝒂𝒛𝒖𝒌𝒊.(@ykazuki_ouniv)さんの投稿があったのは、今月18日。生協への質問や意見、要望を書く「ひとことカード」の写真が添えられており、その内容が論文よろしくあまりにも理路整然としていながら、妙に偏執的なユーモアに満ちていたため、瞬く間にTwitterユーザーたちの心を捉えました。

曰く――、

「昨年度(値上げ前)の4〜8月と今年度(値上げ後)の11〜12月にかけて、天津麻婆丼の(豆腐の)個数を調査した」

「丼の中で7割以上の形状を保持している豆腐の数を各年度21サンプルずつカウントして統計をとったところ(中略)、値上げ前と値上げ後で天津麻婆丼の一食あたりの豆腐の数が減少しているという結果が示唆された」

「この結果が正しい場合、考えられる原因としては、原材料である豆腐の分量が減らされたこと、あるいは丼に麻婆豆腐を入れるときの分量が減らされたことかのいずれかが考えられる」…云々。

さらには総務省統計局の小売物価統計調査を踏まえ、豆腐の価格にはこの5年で大きな変動がなく、「他の材料価格が高騰したとしても、豆腐の分量を減らす理由が存在しないはず」と追及。「値上げは致し方ない」と一定の理解は示しつつ、「安くて美味くてお腹いっぱいになる天津麻婆丼の質を維持」するよう求め、「このような豆腐の数にさえ敏感な人たちが生協会員の中にいるということをお忘れなきよう重ねてお願い申し上げる次第です」と異例の長文をわざとらしいくらい(笑)慇懃に結んでいます。

これを受けて立ったのは、図書館下食堂の店長Mさん。「天津麻婆丼が本当に愛されているんだとあらためて思い知った。きちんと、真摯に説明しなければならぬ」と覚悟を決め、2、3日考え抜いた末、「商品価格改定と食材費高騰」と「豆腐の盛り付け量」という2点に分けて事情を包み隠さず回答しました。

曰く――、

「価格改定は食材費の高騰に伴うもの。『食材自体の価格は変わらない』というご意見でしたが、店舗に納品されるまでに付随する費用(物流費、人件費の高騰・変動など)が高騰しているのです」

「値上げ前と後でレシピに変更はなく、盛り付けに差が出てしまったことは大変申し訳ございません。スタッフ全員に改めて周知し、規定量での提供を実施します」

そして、「これからも学生の食を支える食堂として、日々努めてまいります。ご利用をお待ちしています」と決意表明。さらに、阪大生協フードサービスのTwitterアカウントでは「中の人まで通知が届きました(意味深」とユーモラスに投稿し、天津麻婆丼をあらためて宣伝していました。

ちなみに図書館下食堂は、学外の人もプラス5%価格で利用できます。今回、一躍その名を世に轟かせた天津麻婆丼は学外価格540円(税込み)。提供される期間は、3月は22日から26日のランチタイム、4月9日以降は平日11時〜19時です。気になる人はこの機会に是非。

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