「捨て椅子かと思って近づいたら、80才のお婆さんの切実な思いが綴られていた。」
バス停に置かれた一脚の椅子をめぐりSNS上で大きな論争が起こっている。
きっかけになったのは俳優のスミマサノリさんが投稿した画像。
一見、捨て椅子かと思ってしまうような古ぼけた椅子に、国土交通省、警視庁連名で「警告 道路不正使用」という貼り紙がしてあるのだが、よく見るとその上には「青学前にはイスが有ります。二丁目にはないので80歳の私バスを待つ間使わせてください。」というお年寄りからのメッセージが。
この投稿に対し、SNSユーザーからは数多くのコメントが寄せられているが、「こんな警告貼る暇が有るなら、法律に引っかからないやつを設置してやれよって思います」「椅子の後ろにある電線地中化の地上機器に補助席機能を付けてあげてほしい。」「椅子くらい置かせてやれっていう話あるけど、ひとつを許すと無法地帯になる可能性があるんだよね」「ルールを蔑ろにすべきではないという思いと、今この場に於いてこのルールが遵守されることが本当に社会福祉であるのかと疑問視する思いが、自分の中でせめぎ合ってます。」など、まさに賛否両論だ。
この椅子についてスミさんにお話をうかがった。
中将タカノリ(以下「中将」):こちらの椅子が置かれていたバス停はどちらでしょうか?
スミ:渋谷2丁目のバス停です。
中将:お年寄りのメッセージをご覧になってどのように感じられましたか?
スミ:切実な気持ちが綴られてるなと思いました。自分にも高齢の親がいるので、他人事と思えない気持ちでした。
中将:投稿に対しさまざまな意見が寄せられています。
スミ:私は普段捨てられた椅子に座るという活動をしてまして、その流れであの椅子を見つけました。ここまで反響があるとは思ってなかったので驚いてます。あのメッセージを巡って色々な意見が出ていますが、国土交通省への問い合わせがきっかけになり、どうやらあそこに椅子が設置される流れらしいです。良い形に着地してくれて嬉しいですね。
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▽「スミマサノリ」さんプロフィール
俳優、作家
1970年1月15日生まれ 神奈川県出身
法政大学文学部を卒業後、デジタル系制作プロモーション勤務、デジタル系デザイン事務所の株式会社デジタルビイム代表取締役、フリークリエイターを経て、作家・デザイナー・映像作家・パフォーマーとしてマルチに活動中。 執筆やデザインのほか、自作のショートコントを発表したり、“捨てられた椅子に座るシリーズ”と銘打ったTwitterでの画像投稿など、ユーモラスで独特な世界観にコアなファンを持つ。2019年、俳優の西川瑞と表現ユニット「劇団SAIGEN」を結成。活動の場を広げている。
現在、ドラマ「姉ちゃんの恋人」(フジ)に主人公の同僚「臼井一(うすい はじめ)」役で出演中。
公式サイト「幸福の黄色いすみましん」:http://www.d-beam.net/
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SNS上での反響を考慮してか、今回の話題の舞台となった渋谷2丁目のバス停には正式に椅子が設置されるようだ。これから本格的な高齢化社会を迎える日本。難しい兼ね合いもあると思うが、バス停に限らずさまざまな施設でお年寄りにやさしい配慮が実現できれば良いのだが。