セクハラ、パワハラ、モラハラなど、さまざまな種類のハラスメントを耳にします。さまざまな場所で取り上げられますが、一向になくならない。企業や学校も頭を悩ませる問題のひとつです。ハラスメントは、「本人の意図は関係なく」だれでも加害者になりうるということを、自分事として考えられないことにも難しさがあります。そんななか、ちろきしん(白木しん)(@tai_kai_sha)さんが「熊野寮入寮パンフレットの「ハラスメント加害者にならないため」の七カ条がすごくいい」とツイートしたところ2.8万リツイートと6.5万いいねがつき話題になりました。
熊野寮とは、京都大学(京都市左京区)の学生寮のことで、大学から独立して学生が運営している自治寮です。話題になった7カ条は、性別も国籍もさまざまな約400人の寮での共同生活をよりよくするためにつくられたもの。ちろきしんさんは、4月に入寮する予定でこのパンフレットをもらったそうです。その内容を見てみましょう。
『ハラスメント加害者にならないために』(全文)
1.人の体にはさわらない。
「同性同士のボディタッチは友情の証」、「異性へのさりげないボディタッチはモテるコツ」とか思っていませんか? それ、ハラスメントです。やめましょう。
2.共用スペースでは下ネタ・猥談はしない。
下ネタ・猥談は不快になる人がいます。またある種の「男性ノリ」をその場にいる全体に強要することになります。
3.人の容姿、私生活を評価することを言わない。
ブスいじり、デブいじりなどなど、すべてやめましょう。人の体はその人のもの。ほかの人がとやかく言ったり評価したりすることではありません。
4.「女性/男性はこうである」など性別によって人のあり方を決めつけない。
「女の子なのに化粧しないの?」とか「男性が奢らなきゃ」とか思ったことはありませんか? でも性別にかかわらず自分の生き方は自分で決めるもの。
5.怒られない雰囲気に甘えない。
友だちとの会話の中で、ゲイいじり/デブいじり/不謹慎ネタ等で笑いが取れたとしても、絶対に調子に乗らないこと。周囲の人はいやな思いをしているのに、その場に合わせてニコニコしているだけかもしれません。
6.大学生には彼氏/彼女がいて当たり前と思わない。
「恋人欲しい!」と思って気になる人にグイグイいくと、相手はけっこう怖いかも。特に熊野寮は生活の場です。出会いの場ではありません。
7.もし「それ問題だよ」と指摘されたら
「意図」で反論しない。相手を傷つけてしまったり不快にさせてしまった場合、あなたがどのような意図でそれをおこなったかは全く関係ありません。自分の行動の何を問題だと指摘されているのか、まずは丁寧に聞きましょう。
リプ欄には、
「最後のすごく難しく、たいていの人は「これはハラスメントではない」という反応をするんだよね。言うは易し行うは難し・・・」
「怒られない雰囲気に甘えない のところすごく良い。オフィスにも通じるわ。」
「これ、小中学校高校大学の入学時と入社時、管理職への昇進時に配布してほしい。」
「社会人にも配って欲しい。自分も気をつけなきゃなぁ自戒も含め。「意図は関係ない」ホントそれ!」
さらに「これを読んで、「ああやっぱりあの時にああされて嫌だったのってパワハラだったんだ。その認識で間違ってなかったんだ。私が悪かったんじゃないって自信もっていいんだ。」と心がすっとなりました。代わりに叱ってくれたような不思議なうれしさがあります。見せてくださりありがとうございました。」という声も。ちろきしんさんに聞きました。
──7カ条のどんなところがよいと感じましたか?
まず短い文章の中で、ハラスメントをおこなう個人だけでなく、ハラスメントを生み出す構造も問題にしている点で素晴らしいと思いました。また、問題だと指摘されたケースの仮定をしっかりと入れているのが実践的で有効だと思います。ハラスメントをおこしてしまったケースを想定しておくことは非常に重要だと思います。
──7カ条があることで、寮生活が安心できそうですか?
寮としての立場からしっかりこうしたことが書いてあると、いざハラスメントを受けたときに訴えやすくなると思います。
──話題になりました。
もちろんこの文章をひねり出した人たちが一番素晴らしいのですが、自分がツイートしたことで、熊野寮のイメージアップとハラスメント防止の啓発にささやかながら貢献できたことは非常にうれしく思います。