大阪市のウエディングコンサルティング会社が開発した挙式専用のウエディングドレス一体型電動車いす「isco(イスコ)」が、いま注目を集めている。「車いすのチアリーダー」で知られる歌手でタレントの佐野有美さん(30)も18年、イスコを使った式を挙げた。結婚式以外にも活用が期待される電動車いす。開発したスマイルエッセンス合同会社のCEO川端敦子さん(62)に思いを聞いた。
車いすの花嫁でも、新郎と同じ立ち姿でバージンロードが歩むことができる。先天性四股欠損症で生まれ、短い左足と3本の指以外を欠損している佐野さんは公式ブログで、同社が手がけるイスコを使った挙式プラン「ユニバーサルウェディング」を振り返った。
華やかなウエディングドレス姿や指輪交換、キスシーンの写真を公開し「新郎と目を合わせることができるように昇降式機能が付いていたり スムーズに動けるように車体もコンパクトで 小回りを重視した設計になっており 細かなところまで考えて作られた素敵なウェディング車いすでした」とつづった。
国内外のホテルで約26年間勤務した経験を持つ川端さんは「障がい者でも普通で自然な式が挙げられるように」との思いから2014年、ウエディングコンサルティングの同社を起業。車いすメーカーの協力でイスコを開発し、車いすの花嫁がかなわなかった式での儀式を、次々可能にしてきた。
ウエディングドレスで覆われた車いすは、座面の高さを43~70センチに調整可能。車いすに座りながら立ち姿のようにドレスを着こなすことができ、新郎と同じ高さで視線が合う。6つの車輪で小回りが利き、指輪交換も容易に。コントローラーひとつで操作でき、パートナーが寄り添う形で動かすこともできる。
川端さんはホテル勤務時代、車いすの花嫁を日本では見かけなかったと振り返る。障がいが理由で、式が挙げられないという声に胸を痛め「障がいを感じさせず、健常者がやっていることとすべて同じように挙式ができると伝えたかった」と原動力を語る。東京と大阪のホテルなどが、イスコを使った挙式プランを採用。ここ数年で8組が式を挙げた。
座面の高さが容易に変えられるイスコを、美術館や水族館で活用することも模索。障がい者のみならず、高齢者の生活の幅を広げることも期待されている。「自然なもの、シンプルなものがいちばん素敵。いろんな人の最高の時間が作れるお手伝いをしたい」と意気込む川端さん。健常者には「普通のこと」を不安がる車いすの花嫁を、笑顔に変えていく。
◆スマイルエッセンス合同会社
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