プラスチック製レジ袋の原則有料化が始まって1カ月がたちました。分解されにくいプラスチックによる海洋汚染を抑えることなどを目的にした今回の取り組み。7月1日の開始直後は、その是非や意義を問う報道も多く、レジ袋を作る業界などから効果を疑問視する声があがっていることなどが紹介されていました。その後エコバッグを持ち歩く人の姿も一般的なものとなりましたが、あらためて環境の専門家はどのように考えているのでしょうか。摂南大学理工学部都市環境工学科の石田裕子准教授に聞きました。
有料化が義務付けられたのは、コンビニなどの小売店で買い物客に渡されてきた、持ち手のついたプラスチック製の袋です。有料化はスーパーなどで先行して行われているところもありましたが、7月1日からコンビニや百貨店などでもお金が取られることになりました。
一方、レジ袋として一般的なポリ袋の製造を手がけている包装資材メーカー「清水化学工業」(東京都足立区)は「脱プラ、脱ポリ、紙袋へ 切り替えをご検討のお客様へ」という自社のウェブサイト内のページで、「環境省による海洋プラごみの実態把握調査」の数字を紹介しています。
「漂着したプラスチックごみ類のうち、容積ベースではポリ袋はわずか0.3%」
そのほか、ポリ袋は「石油精製時の残り物から作られる」「紙袋よりも資源消費量や製造にかかるエネルギー、輸送コストが少ない」といったことなども主張。SNSにはそれらを見た人たちから現在も施策への疑問の声があがっています。
摂南大学理工学部都市環境工学科の石田裕子准教授は、人と自然が共生できる都市環境づくりをテーマに研究を進めています。関西広域連合の「琵琶湖・淀川流域対策に係る研究会」の委員も務め、河川を起点としたプラスチック海洋汚染の実態などに通じています。お話を聞きました。
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――海洋プラごみの象徴としてポリ袋の問題が取り上げられますが、業界からは反論も聞こえてきます。
業界団体の訴えとして、よくポリ袋は海洋プラスチックごみの0.3%と言われますが、これはあくまで「漂着ごみ」の中での割合です。「漂流ごみ」の中では6%を占めると言われます。また、海洋研究開発機構(JAMSTEC)の調査では、水深1万メートルの海底でもポリ袋が発見されています。0.3%とするのは過小評価のように感じられます。
――身近な環境で、具体的に深刻さを示すようなデータはありますか。
関西広域連合では、大阪湾に沈んでいるプラスチックごみについて調査しているのですが、大阪湾に沈んでいるレジ袋は約300万枚あることが判明しています。
――えっ…そんなに。
ただし、それは目視が可能だったものからの推計です。ポリ袋は劣化するとボロボロになり、細かいかけらになります。そのような状態で存在しているものまで考えると、正確な分量は分かりません。
――細かくなるとは…近年問題になっている海の中に存在する「マイクロプラスチック」のことですね。
そうです。マイクロプラスチックは、5mm以下のサイズのプラスチックのことを指しますが、その中には相当数のポリ袋由来のプラスチックが入っている可能性があります。
――そんなごみはいったいどこからやってくるんですかね…。
大阪湾を含む瀬戸内海の漂流・漂着ごみは7割が陸から流入するとされていますが、ポイ捨てされていたり、風などで飛ばされてごみになってしまったものが、河川を通じて海に流れ込んでいるとされています。その中には大量のプラスチックごみも含まれていると考えられます。
もちろんプラスチックごみはポリ袋だけではありませんし、ポリ袋「だけ」が悪影響を及ぼしているわけでもありません。ただ、現時点でも相当のポリ袋が海に流入していることが分かっている以上、減らすことが大切ですね。