全国民に定額給付金が支給されるなか、それに絡んだ詐欺が横行しました。今は給付金がかなり人々の手元に行き渡ってきていますので、次に詐欺師たちが仕掛ける恐れのあるものは、オレオレ詐欺とみてよいでしょう。
状況を巧みに利用するのが、詐欺の手口ですが、心配になるようなニュースも出てきます。このところ、20代30代の若者のコロナ感染が首都圏で急増してきており、詐欺を行うにあたって、都合の良い状況が生まれつつあるのです。
「東京由来のコロナ」という言葉とが生まれているように、東京がコロナの感染源になって、地方に広げていますので、東京に住む若者から中年世代に至るまで多く人たちが帰省を控えています。となれば、実家に帰れないわけですから、息子、娘をかたっての電話を地方部にかけやすくなるというわけです。
6月、長男を装って高齢の女性宅に「PCR検査で新型コロナの陽性反応が出てしまったので、助けてほしい」とお金を要求する電話をかけ、1500万円もの金をだまし取ったとして、男2人が逮捕されています。警察によると、1人が現金を受け取る役で、もう1人が家を探す案内をしていたとのことで、スムーズに詐欺が実行できるように、双方が役割分担をしていました。これ自体は先月初めの詐欺ですが、今後も、こうした「コロナにかかったよ」詐欺の事例は増えていくのではないかと懸念しています。
だましでは状況をうまく利用するものですが、彼らが使う擬態行動にも気をつけてほしいところです。
高齢女性宅に息子を装って電話をかけて「友達から預かっているお金を、今日中に返さなければならない」と言って、300万円をだましとった69歳の男が逮捕されています。
逮捕のきっかけとなったのは、高齢女性が弁護士事務所の職員を名乗るこの男にお金を渡したものの、相手がTシャツ姿だったことから「おかしい」と思い、口論になっているところに、別の事件で来ていた警察署員が、職務質問をして詐欺が発覚しました。驚くのは、この時、詐欺師がお金の受け渡しの場所として指定したのが、簡易裁判所のロビーだったのです。
裁判所というと、警察関係者もいて、リスクがあるように思われます。しかし、以前にカルト教団の指名手配犯が田舎ではなく、都会に身を隠していて長年発見されませんでしたが、人々のなかに紛れることで発覚されにくくなることがあるかもしれません。ですが、裁判所を使う一番の理由は、相手に本物だと思わせることにあるでしょう。
「木を見て、森を見ず」という諺がありますが、詐欺師たちの場合は逆で「森を見せて、木に思わせる」手法をとります。つまり、森の中にあるから、それは本物の木だろうと考えさせてくるわけです。裁判所には、たくさんの法曹関係者がいます。それゆえ、相手の弁護士関係者も本物だろうと思わせるのです。ただし、今回はTシャツ姿という装いがお粗末なものだったので発覚しましたが、そうでなければ、見抜くのは難しかったかもしれません。
状況に溶け込むことで、本物に見せかける。
これは、動物が色や形を周りのモノに似せる、擬態行動ともいえます。草木の中に息をひそめるカマキリやカメレオンのような存在です。相手を捕食するためにするために、周りに溶け込む。もちろん詐欺師と同列に扱ってしまい、動物たちに大変失礼な話かもしれませんが、詐欺師たちの擬態による捕食行動には注意していかなければなりません。