7月7日、都内の繁華街で異様な光景が見受けられた。平日の朝にもかかわらず、新宿や渋谷では1000~2000人、それ以上かもしれない行列ができていた。このコロナ禍の中、密、密、密! 路上のため密閉ではないが、密集、密接は間違いない。3密ならぬ2密。小池百合子知事に「密です!」と怒られること請け合いである。一体、この人の群れは何なのか。察しの良い読者の方なら答えは、お分かりだろう。店の前に、路上に路地裏に、ありとあらゆるところにびっしりと群れていたのはパチンコ店に並ぶ人々だ。
そう、7月7日。この日は全国のパチンコ・パチスロファンにとっては年に1度の“ラッキーセブン”が並ぶ聖なる日だ。まるで聖地巡礼がごとく、店の周りを何重にも取り囲む。
このコロナ禍の中、この密集はいささか不謹慎ではないか、と感じる方も多かろう。しかし、この狂騒は、とある理由があって引き起こされた出来事だった。そもそも東京都ではパチンコ店に対する規制が強化され、現在は射幸心をあおる来店イベントは禁止。過剰な広告メールやLINEメッセージを送ることも制限されている。なのになぜ、こんなに集まったのか。
パチンコ店のイベントが規制されたいまでも、それ以前にイベントを行っていた日は「旧イベント日」と呼ばれ、公にはしないものの、以前と同等のイベントを行っていることは“暗黙の了解”となっている。店側は「客が勝手に思い込んで来ているだけ」というスタンスだが、当然還元率は高め。その中で最もアツいとされているのが7月7日。一獲千金を求めるファンが集まる。
今回のコロナ禍でパチンコ店は、東京都の自粛要請で「ステップ3」という非常に厳しい制限業種に位置付けられた。最初は要請に従っていた店舗も、長引く補償なき自粛要請に業を煮やし、営業を再開。都は要請に従わない店舗名を公表するなど、モグラ叩きが続き、ついに「東京都遊戯業共同組合」はコントロール出来ないことを理由に「営業再開は自主判断」とし、なし崩し的に全面営業となり、いまに至っている。
一応、パチンコ店の名誉のために言うと、ようやく営業再開できたパチンコ店は、風当たりがこれ以上強くならないようにコロナ対策を万全にして営業を始めた。入店時には手のアルコール消毒、センサーによる検温に引っかかったり、体調不良とみなされた人は強制退店、1時間に6~10回程度の空気の入れ替え、台間の仕切り板、マスク着用の義務等、徹底した対策を講じている。
その中で、朝の入場抽選もネットを利用したモバイル抽選を採用する店舗が増加。店頭に並ばず、スマホで完結し、当選した人だけが開店直前に店に来て入場するという、密集をなるべく避けるシステムだ。今回もそのシステムを利用して抽選を行ったのだが…。
結論から言おう。抽選に参加した人数が多すぎてモバイル抽選がサーバーダウンしたのである。ある店舗では、参加可能人数500人弱のところに3500人もの人が参加していた。人気店では軒並み参加人数が異常値になり、アクセスができない状態に。結果として、急きょ店頭で抽選を行うことになり、抽選参加を望む人が押し寄せたというのが今回のことのてん末だ。
かく言う私も白状すると、当日パチンコ店に出向いた。朝の混乱と狂騒の中で超密な状況はさすがに罪悪感に襲われる。ほとんどがパチスロ目当ての若い客だ。急なトラブルで「てんやわんや」の店員と客を横目に私は、ほとんど客がいないパチンコ客の入場口からすんなりと入店した。実は、前日下見した時に昔ながらの一発台のお宝台を見つけており、それを狙っていたのである。
いざ、入店してみると、それまでの喧騒が嘘のような客の少なさに少々驚くが、難なくお目当ての台を確保した。前日とクギが変わっていないことをチェックし、早速勝負!最初こそ少し手こずったが、もくろみ通り出玉は増えていく。15時くらいになったが、私のいるシマ近辺はゆったりとした時間が流れている。「密」ならぬ「疎」だ。何か昭和的なノスタルジックな感覚に陥る。
その後は一進一退を繰り返し、一時は出玉も「疎」になりかけたが、何とか盛り返して終了。大勝とまではいかないものの、納得の結果だ。外に出ると、渋谷の街は23時近くでもまだまだ人通りは多かった。
それにしても、早朝の狂騒はいただけない。大手遊技機メーカーが運営しているモバイル抽選ならサーバーを強化するなどの対策を講じ、業界の努力を無駄にしないでほしいと空を見上げて願った。そう、この夜は七夕だった。残念ながら星は出ていなかった。