「免許返納」と言われても…地方の高齢ドライバー事情とは

北村 守康 北村 守康

 そこで免許返納するまでの応急処置として、現実的な対策を湯本さんに聞いた。

 「今年は高齢者ドライバーの印象的な事故が相次ぎました。ブレーキとアクセルを踏み間違えたという加害者の決まり文句がありますが、その原因は加齢による認知機能の低下というより、パニックになったことで大事故に至ったと説明するのが妥当だと考えます」

 いきなり大事故になる訳ではない。大事故の背景では、その前段階でちょっとした接触事故や、些細な操作ミスをしているケースが多い。今年4月に東池袋で起きた母娘死亡事故も、人をはねる前に縁石に衝突し、直後パニックになりブレーキとアクセルを踏み間違えて、あの悲惨な事故に至ったとメディアは伝えている。

 パニックの対処法を身につけることで大事故のいくつかは防げると経験的に湯本さんは考える。

 「免許の取得・更新時に事故を起こさないための指導は受けますが、事故を起こした際の対処法はほとんど教わらないと思います。大事故の背景には加害者がパニックになっているケースが多いので、パニックにならないための対処法や事故後の手順を学ぶ機会を設けたり、日頃から事故を起こした際のシミュレーションをしたりすることで大事故の要因であるパニックはある程度軽減できると思います」

 山間部の高齢ドライバーにとって、車は食料や日用品、自分自身を運搬する道具に留まらない。車があることで人の集まる場所に出向き、人とコミュニケーションでき、自分が社会の一員であること、孤独でないことを認識できる。それに高齢者が運転をやめると要介護リスクが2倍になるというデータもある。地方の高齢ドライバーにとっての車は、都会のそれとは同じでない。これらを考慮した現実的かつ、高齢ドライバーに心優しい措置とは…課題は山積みだ。

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