また日本の公共交通は欧州と違って民間企業が担っている場合がほとんどです。競争原理が働くため、ある地域の中で鉄道、バス、タクシーといった各々の事業者は、各々の利益だけを考えてしまいがちです。その結果、共倒れてしまって、その地域にはクルマ以外の移動手段がないといった状況が起こりかねません。
このような地域の移動の課題を解決するのがMaaSの考え方で、その取組みを支えるのがデジタルテクノロジーです。
たとえば、公共交通や新しく生まれた移動手段のサービスの情報がばらばらにあると使いにくくないですか?今いる場所から目的地までに行くには、どんな経路で、どんな移動手段を組み合わせるとよいのでしょうか。情報、予約、支払いまでが一つのスマートフォンのアプリで行えると便利ですね。
地域の公共交通事業者など移動手段を提供する事業者もばらばらに営業するのではなく、一緒になってお客さんづくりをしたり、スマホのアプリを使ってお客さんづくりをするのがうまいプロに任せたりすると、システムの開発や営業にかかる出費も少なくなり、安全運行に注力できるようになるなどメリットがあります。
【MaaSはまさに『まちの再構築』】
MaaSは世界的に事例が増えています。日本国内では私鉄沿線から登場しています。東京の新宿駅から神奈川の小田急駅を結ぶ小田急電鉄(小田急)、東京の渋谷から横浜、世田谷、田園都市などを走る東京急行電鉄(東急)が、ドイツの自動車メーカー・ダイムラーのmoovel(ムーベル)社が提供するアプリを活用して、郊外型MaaSや伊豆で観光型MaaSを展開しています。
また、福岡県内の鉄道やバス路線網を持つ西日本鉄道(西鉄)は、トヨタ自動車が提供するアプリ「my route(マイルート)」を使って実証実験を行っています。