「欠けて繕ったところに猫を描いた『金継ぎ』ならぬ『猫継ぎ』。猫は液体みたいにいろんなポーズするから、欠けに合わせて無限にできそう」
そんなコメントとともに、うるしと漫画を手がけるXユーザー・堀道広さん(@ookinaosewa)が3枚の写真を投稿しました。
写っていたのは、一見ふつうの白っぽい平皿──しかしその中央を大胆に走る割れ目には、両足を鍋のように投げ出した猫が。金粉があしらわれたそのポーズは、まさに金継ぎの新境地ともいえるユーモラスなアートです。
さらに別の写真には、割れ目に添って描かれた猫のきょとん顔がアップで写され、最後の1枚にはそのモデルとなった白黒ハチワレの女の子「ぽん」ちゃんの姿も登場。3枚を見比べると、その再現度に驚かされます。
壊れた器に新たな命を吹き込む伝統技法「金継ぎ」に、愛猫への遊び心を加えた“猫継ぎ”。このユニークな発想に共感が広がり、投稿には1.6万件を超える“いいね”が集まりました。
通常は取材を制限しているという堀さんが、今回は特別にお話を聞かせてくださいました。アイデアの背景から制作のこだわりまで、その想いに迫ります。
「猫継ぎ」に込められた愛とユーモア
ーー「猫継ぎ」を考案された経緯について、教えてください。
「漫画家とは名乗るものの漫画の仕事がない20年前から、副業で金継ぎ教室やご依頼品の金継ぎ修理をしていまして、通常の金継ぎの他にも『呼び継ぎ』『かすがい継ぎ』などの変化のある補修技法にも可能性を感じていろいろやっています。その一環で、欠損した部分に色漆で猫を描いたら『金継ぎ』ならぬ『猫継ぎ』じゃないか? と思ってやってみました。率直に言うと、もっと猫が好きで描いたという気持ちだったのです」
「今回の投稿写真にも写っている我が家の家猫で女の子の『ぽん』が、まるで液体のようにありえない体勢でぐにゃ~と寝ているのが面白くてかわいくて、金継ぎの繕った部分にぽんを描いてみたいなというのが発端です」
「金継ぎに使う金粉が、自分の始めた30年前の約8倍に値上がりしているというコストの問題も関係していると思います。金を使わなくて良いので節約になる→お客様に安くお直しできるし、(偶然身についたナゾの絵心で)かわいくなるし、良いことずくめだな、と。ありがたい話ですよね。と思います」
ーー今回の「猫継ぎ」のモデルは、ぽんちゃんですか? また、「猫継ぎ」ならではの難しさがあれば教えてください。
「この欠けは、このポーズだなと、この画像を参考に描きました。実は数年前から考案していたものの、めんどくさがりでやっていなかったのできっかけにはなっていないのですが、ぽんは昨年から一緒に暮らし始めた猫なので、残念ながらこの投稿のモデルにはなっていないです」
「猫はフリーハンドで描くので、かわいく描けなかったらどうしようと思います。猫の絵を失敗すると『猫継ぎ』も、器さえ台無しになってしまうかもしれないと思い、責任重大と思い描いています。猫の神様と絵の神様に祈るような気持ちで描かないといけません(笑)」
ーー今後、「猫継ぎ」で挑戦してみたいポーズや表現はありますか?
「特にないのですが、欠けの形状は様々なので、欠けに合わせてどこまで猫を『格納』できるのか、自分にとって挑戦というか、のびしろしかないという気持ちです」
ーー「うるしと漫画」という独自の活動スタイルについても教えてください。
「一言で言いますと、謎で、何にも考えていません。もともと漆の職人が働きながら漫画家を目指しただけで、それ以降の25年くらいの間に『漆』『金継ぎ』とか『漫画』『イラスト』『似顔絵』と、来た仕事を全部引き受けていただけです。実は自分で選んだことがないです」
「こう見えて不器用で、あれこれ手を出しているように見えますが、平たく言うと『漆と漫画』しかやっていません。本当は一本道の人に憧れますが、25年以上『漆と漫画』なので、それも一つの生き様だと思い使命感を持ってやっています」
「どちらも奥が深くて100点がなくて、面白いです。『金継ぎ』は一つの修理技法で、本来個性を消していく作業なはずなのに、やった人の個性がどうしても出てしまう、自己矛盾しているところが面白いですね。『猫継ぎ』も、必ず描いた人間の個性が出るはずですし、今となってはそれぞれが支えあって自分という人間を助けてくれる欠かせない要素だと思っています」
ぽんちゃんの姿と、器に描かれた猫の絶妙なシンクロぶりに、癒やされたという声が多く寄せられています。
「ほしい」
「ててて天才」
「ナイスアイデア」
「茶器の歴史を一歩進めてる……」
「とても良いです。素晴らしい」
「やりたい!やる!」
「かわいい!! めちゃくちゃいいですね」
「こういうアイデアは最高です!!!」
「猫継ぎのためにお皿割りたくなりそう←だめ絶対」
「これはぜひ作品展を開催していただきたい……!」
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