<ビッグモーター不正・後編>保険トラブルに巻き込まれないために…契約者ができること 問題の背景にある「情報の非対称性」

「明けない夜はない」~前向きに正しくおそれましょう

豊田 真由子 豊田 真由子

 今後どうなる?

本件は、保険制度の根幹にもかかわり、社会全体に大きな影響を与える可能性があり、国も迅速に動いています。国土交通省が、道路運送車両法関連で、ビックモーター社の34事業所に立入検査に入り、金融庁が、損保会社及びビッグモーター社に対し、保険業法に基づく報告徴求命令を出しました。

ビッグモーター社に対してどういった行政処分が行われるかは、「どういった不正が、どういう指揮命令系統の下で、どのように、どれくらい行われていたのか」といったことについての詳細が、どう認定されるかによりますので、あくまでもこういう可能性が考えられるという話ですが、想定され得るものとしては、道路運送車両法上、「民間車検場」の指定の取り消しや、分解整備を行える「認証工場」の取消し、業務停止など。また、保険業法上は、業務改善命令、業務停止、保険募集の登録の取消しなどがあります。

上記いずれの法律にも、事案に応じた懲役や罰金刑があります。

そして、違反行為が法人の業務又は財産に関して行われた場合には、実際の行為者(実行した社員や上司)のほか、その法人(ビッグモーター社)に対しても罰則を科することができます(両罰規定)(道路運送車両法111条、保険業法321条)。

また、刑法の器物損壊罪などについても考え得るところでありますが、刑法上の刑を科されるべき者は、自然人(権利義務の主体となる個人)であることが前提とされますので、今回の件でいえば、修理のために預かった車を故意に傷付ける、店舗前の樹木を除草剤を使って枯らすという行為を、実際に行った社員が刑罰の対象となります。ただ、上司からの指示があった場合に、共謀の事実等が認定されれば、共同正犯となる可能性があります。

これまで公にされている内容を見る限りは、違法行為を行ったビッグモーター社の社員は、自己の利益のためというよりは、会社や上司から課されたノルマやプレッシャーに耐えかねて、という面が大きいように思われますので、個人の責に帰すということではなく、一体何がどうなってこうなってしまったのか、を精緻に分析し、行政や司法を通じて、正しく是正していただくことが必要だと思います。

また、企業経営がどうなっていくか、ということは、消費者がどう判断するかという市場原理に基づくわけですが、現在、販売・事業とも売り上げが大きく落ち込んでいるとのこともあり、非上場の同族経営であることも踏まえれば、民事の損害賠償請求などに適切に対処できるようにしていただくことが必要と恩います。

私は、メディアに携わらせていただく者として、なんであれ、「個々の事件について、センセーショナルに取り上げて、終わり」ではなく、それが起こった真の原因・背景は何か、そうした同様の事案を防ぐためには、そして、さらに社会を良くしていくためには、具体的に何をすることが必要であるか、を考えていくことが大切と思っており、今回の件にも、その必要性を強く感じます。

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