<ビッグモーター不正・後編>保険トラブルに巻き込まれないために…契約者ができること 問題の背景にある「情報の非対称性」

「明けない夜はない」~前向きに正しくおそれましょう

豊田 真由子 豊田 真由子

損保会社のかかわりは?

損保会社は、ビッグモーター社に対し、損害賠償請求及び保険代理店の委託契約を解除する方向ということで、保険契約上、保険金は、保険会社から保険契約者(車所有者)に支払われたものなので、損保会社は、損害賠償請求という形で、過大に支払った分をビッグモーター社から取り戻すということになります。

本来、保険会社は、修理業者としてのビッグモーター社に対して、自動車の被害状況や修理代などについて適正であるかを厳しくチェックする立場にあります(※)が、一方で、保険代理店としてのビッグモーター社は、自賠責・自動車保険の契約を、代理で大量に取って来てくれるありがたい存在です。損保会社は、利益をもたらしてくれる相手に対して、一方で、厳しく査定をしなければいけない、という状況にあり、それがどこまで厳格に行われていたか、という問題になります。

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(※)具体的には、書類上のチェックだけではなく、本来は、自動車事故の査定には、保険会社側のアジャスター(損害調査の専門資格を有する者)が現車を確認し、「適正な作業範囲や価格」が決められる、また、軽微な事故については、写真による見積りで済ませることもありますが、この場合でも、事故の状況と車の損傷状態が大きく食い違うような場合には、アジャスターによる現車確認が行われることが求められます。

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修理業者と保険会社が連携をしていることで、保険請求などの手続きが事務的にスムーズに進むなどの実務上のメリットもあったと思いますが、保険契約者保護に欠ける結果になるといったことが、もしあったとするのであれば、全く持って論外です。損保会社からビッグモーター社への出向者もおり、不正を認識していたかどうかといったことを含め、金融庁により、両社の取引実態や、保険契約者への対応について、契約者保護の観点から調査が行われていますので、注視したいと思います。

ただ、わたくしが金融庁で仕事をしていたときに、日々接していた生損保会社の方々は、保険という公共性の高い制度によって、いかに契約者や社会の安全・安心を守っていくか、ということに注力しておられたと思います。(付け加えると、保険会社は、悪質な保険の不正請求(極論すれば、保険金殺人など)に、毅然と対峙しないといけないこともあり、相当の胆力の要求される仕事、という印象もあります)

今回のことで、保険業界全体に対するイメージや信頼が損なわれてしまうようなことがあるとするならば、非常に残念なことだと思います。

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