株式会社LIXIL(東京都品川区)は、国立大学法人金沢大学、ならびにコマニー株式会社(石川県小松市)と共同で発足させた「トイレのオールジェンダー利用に関する研究会」にて、トランスジェンダーのトイレ利用に対する調査を実施しました。調査の結果、トランスジェンダーである人が性自認に沿ってトイレを利用することに「抵抗はない」と回答した割合は、オフィス、公共機関ともに約7割という結果に。特にオフィスにおいてはこの5年で抵抗感が減少していることがわかったそうです。
性自認とは、それぞれの人が自分の性別をどう認識しているかという概念。同研究会では、WHOなど国際機関の報告書などを参考に、トランスジェンダーを「自身の性別を、出生時に付けられた性別とは異なるものとして認識している人」と定義。シスジェンダーと呼ばれる出生時に付けられた性別と性自認が一致し、それに沿って生きる人を含めて、20~59歳の有職者1325人(シスジェンダー男女各500人、トランスジェンダー325人)を対象に、2022年11月に調査を行いました。
シスジェンダーの人に対し、「あなたが利用しているトイレと同じトイレを、トランスジェンダーの人が性自認に沿って利用することについて、どう思いますか?」と聞いたところ、オフィスのトイレでは「抵抗はない」と答えた人が71.5%(抵抗はない:46.0%、どちらかといえば抵抗はない:25.5%)となりました。また、公共施設のトイレでは「抵抗はない」と答えた人は66.9%(抵抗はない:42.2%、どちらかといえば抵抗はない:24.7%)という結果になりました。
特にオフィスのトイレについて、2017年の調査と比較してみると、「どちらかといえば」も含めて「抵抗はない」と回答した人の割合は、2017年の65.5%から2022年では6ポイント増加しました。特に、「抵抗はない」が2017年は34.1%だったのに対し、2022年では11.9ポイント増加して46.0%となり、この5年で性自認に沿ったトイレ利用に対する意識の変化がみられたといいます。
また、「『LGBT等性的マイノリティ』に関する研修やセミナー等を受けたことがありますか?」と聞いたところ、「ある」と答えたシスジェンダーの人は12.8%という結果に。
また、研修等の受講経験がある人は、ない人に比べて、トランスジェンダーの人が性自認に沿ってトイレを利用することに対して「抵抗はない」と回答した人の割合が4.6ポイント高い結果となりました。
なお、「主に利用しているトイレ(実態)」と「利用したいトイレ(理想)」が一致していない割合について調べたところ、シスジェンダーの人ではオフィス:4.6%、公共施設:3.3%だったのに対し、トランスジェンダーの人はオフィス:42.2%、公共施設:29.5%となり、オフィスでは37.6ポイント、公共施設では26.2ポイントも高い結果となりました。
不一致の主な理由を聞いたところ、以下のようなコメントが寄せられたそうです。
▽多機能トイレを利用したいが、障害のある人などの利用を妨げそうで不安
▽男女共用トイレを利用したいが、公共施設、職場ともにないことが多い
▽出生時の戸籍性別で働いているため、職場では自認する性別のトイレは利用できない
なお、公共施設に比べてオフィスの方が「不一致」の割合が高くなっていることについて、同研究会は「不一致の理由として、オフィスの方が公共施設以上に『周囲の目』を気にするものが多くありました。顔見知り同士で利用するオフィスの方が、より課題が深刻であることが伺えます」と説明。「その背景には、働きたい性別で働くことができていない状況があり、トイレの課題は、就労困難の要因のひとつとも指摘されています。トイレの整備とともに、トランスジェンダーが働きやすい環境を整えることが求められます」と述べています。