2024年9月、兵庫・西宮市内のマンションで4匹の子猫が保護されました。西宮市を中心に野良猫のTNR活動(T=Trap/捕獲し、N=Neuter/不妊去勢手術を施し、R=Return/元の場所に戻す)や地域猫の見守り、保護・譲渡活動などを行っている個人ボランティア集団『かぎしっぽ』に情報提供があり、現地に行ってみると、金網で囲まれた場所に母猫と子猫3匹がいたそうです。
「たまたま通りかかった管理人さんに事情を説明するとカギを開けてくれて、中に捕獲器を置くことができました。お母さん猫が最初に入ってくれたおかげで、数時間でみんな入ってくれましたね」(かぎしっぽメンバー・今城志乃さん)
情報提供があったのも「子猫3匹」。ただ、それまでの経験から「もう1匹くらいいるかもしれない」と直感的に思った今城さんは、さらに捕獲器を設置。読みが当たり、合計4匹の子猫を保護することができました。
男の子2匹と女の子2匹。みんなキジトラで生後2か月くらい。体重は800~900グラムでしたが、1匹だけ600グラム台の子がいました。チョコくんと名付けられたその子は、保護した際、右後ろ足の先が欠損していたそうです。
「傷口は治りかけていて、病院で『1か月以上たっているのでは』と言われました。まだ暑い季節でしたが、化膿もせず治ってくれて本当によかったです。鋭いものでスパッと切れたような傷口だったので、それがかえってよかったのかもしれません」(今城さん)
ちょっとしたハンディのあったチョコくんですが、かわいい盛りの子猫とあって、譲渡会に参加するとたちまち家族ができました。迎えてくれたのは西宮市内に住む大汐さんご夫妻。14歳になる黒猫・ジジくんがいて、「もう1匹」と考えていたときの出会いでした。
「半年程仕事をしていない時期があって、ジジとずっと一緒だったんです。仕事を再開することになったとき、ひとりぼっちでさみしくないか、一日中寝て過ごすのはどうなのかと気になって…。最初はペットショップに行ったんです。でもピンと来なくて、夫も『保護猫を』ということだったので、譲渡会を調べてかぎしっぽさんにたどり着きました」(大汐舞衣さん)
二人にとって初めての譲渡会。「どんな感じか見に行ってみよう」と足を運んだそうですが、そこで運命の出会いがありました。
「ジジは一人遊びが好きなので、同じタイプの子がいいなと思っていました。すると、4匹一緒に入ったケージの中で、テト(チョコくんの現在の名前)だけが猫じゃらしで遊んでいたんです。ジジが14歳なので、年齢差や体力差が気になりましたが、大丈夫だと言っていただいて」(舞衣さん)
チョコくんの足のことは気にならなかった?
「それは全く。もちろん説明は受けましたが、前足のチカラだけでケージの上の段にのぼろうとしたり、とても元気だったので」(舞衣さん)
初対面でも抱っこさせてくれたチョコくんにトライアルを申し込み、すぐにケージやトイレ、猫砂を買いに行きました。
トライアル初日。ジジくんと部屋を分けるため、チョコくんはリビングに入れないようにしていたそうですが、かぎしっぽのスタッフから説明を受けていると、隣の部屋からのぞこうとしたり、とても好奇心旺盛だったそう。翌日、同じ部屋にケージを移すと、すぐに距離が縮まり、“鼻チュー”のご挨拶。相性は良かったようです。
「ジジが時々、自分が上だとアピールしていましたが、シャーシャーはなかったですし、2週間のトライアルが終わって、迷いなく正式譲渡していただきました」(舞衣さん)
新しい家にも家族にもすぐに馴染んだチョコくん改めテトくん。片足の先が欠損していることで、不自由さを感じている様子は見られないと言います。
「階段で滑っていたので大きな段差のところは止めていますが、ジジのマネをしたがるんですよね(苦笑)。3本足で器用に走り回っていますし、気にしていないようです」(舞衣さん)
随分と年齢の離れた弟ができたジジくんには、何か変化があったでしょうか。
「以前はエサを置いていても食べない日があったのですが、テトが来てからは並んで一緒に食べるようになりました」(舞衣さん)
野良猫から家猫になったテトくんにとっても、シニア期のジジくんにとっても、新しい生活は快適なようです。
ちなみに、一緒に保護されたきょうだい猫のうち、ココアくんはテトくんと同じ1度目の譲渡会でご縁があり、マロンちゃんとコロンちゃんにもトライアルのお申し込みが入っているそう。お母さん猫は避妊手術をして元の場所にリリースされ、一代限りの生を全う中です。
◇かぎしっぽインスタグラムhttps://www.instagram.com/nishinomiya_hogoneko/