毎年4月から6月は「狂犬病予防注射期間」です。室内犬・屋外犬を問わず、年1回の「狂犬病予防注射」の接種は法律で定められた「義務」であり、注射を怠った場合、20万円以下の罰金刑が科される場合があります。また、未接種犬が咬傷事故等を起こした場合、飼い主の責任が問われるため、犬の所有者は必ず飼い犬に「狂犬病予防注射」を受けさせなければなりません。
WHOが勧告する「狂犬病の流行を阻止できるワクチン接種率」は70%ですが、現在、日本における狂犬病予防のワクチン接種率は、危険レベルである約50%以下に低下しているといいます。この危険な状況について、獣医師はもちろん、あらゆる医療関係者が警鐘を鳴らします。
整形外科医も脳神経内科医も「ワクチン接種」を呼びかけ
Twitterで10万人以上のフォロワーを持つおると 整形外科医(@Ortho_FL)さんは、「『狂犬病ワクチン不要』ってのが流れてきたが、ヒトが発症すれば『ほぼ100%死ぬ』恐ろしい病気ですよ」とツイート。
「例えば患者さんから、『一昨日猫に噛まれた指が腫れて痛くて動かせない』と聞いた場合、整形外科医は覚悟を決めます。狂犬病に限らず、化膿性腱鞘炎や骨髄炎などに波及する恐れがあり、場合によっては緊急手術となります。愛犬や愛猫が他人を噛まないようにしっかり躾や対策をし、ワクチンなどをしっかり接種してください」と、おると先生は語ります。
「狂犬病予防注射」は政府や獣医師の陰謀!?
ネット上では「狂犬病予防注射」を、政府や獣医師の利権や利益のための陰謀だと吹聴する人もいます。しかし、脳神経内科医のばりすた 脳神経内科医(@bar1star)さんは、「狂犬病は人間を含むすべての哺乳類に感染する病気。もし私が利権のための陰謀を企てるなら、ネコやヒトなど、すべての哺乳類に打たせるでしょう」と、語ります。「狂犬病」は脳神経内科医も警戒する、絶対に予防するべき危険な感染症だといいます。
「狂犬病は、発症すると異常行動や痙攣などを経て、ほぼ100%死に至る恐ろしい感染症です。『なんだか言動がおかしい』が受診理由であることが多いため、我々脳疾患を扱う診療科や、救急科などが初期対応することが予想されます。自分自身やスタッフを守るには、現在の日本では珍しい疾患である『狂犬病』を疑って対策できるかどうか?にかかってきます。突然興奮した患者さんに無警戒なところを噛みつかれてしまい感染……という事態は何としても避けなければなりません」(ばりすた 脳神経内科医さん)
「犬」に接種する理由→「人間への感染率が最も高いから」
ネット上には「なぜ犬だけに接種するのか?」という疑問の声も見受けられます。例えば、野生動物にワクチン接種することは実質不可能です。さらに、厚生労働省によると、全世界で「狂犬病」で亡くなる人の大半が、犬に咬まれて感染しているそうです。そのため、「人間への感染率が最も高いとされる『犬』に優先的に打つことで蔓延を防いでいるわけです」と、ばりすた先生は語ります。
獣医師によると、万が一狂犬病が蔓延した場合は、猫などの犬以外の動物への接種もあり得るそうです。