「命を削って登校している」高2男子 授業のオンライン化求め署名活動 1万2千人超が賛同

斉藤 絵美 斉藤 絵美

神戸市内の県立高校に通う2年の男子生徒(17)が8月末から、学校に行かずにオンラインで受けた授業を単位認定するよう求める署名活動をインターネット上で始め、現在1万2千人を超える賛同を集めています。新型コロナウイルスの本格的な流行から1年半が過ぎ、教育現場もタブレットの貸与や校内のネット環境整備など、オンライン授業に対応できるよう準備を進めてきましたが、男子生徒は「今でも学校に行かなければ進学できないのが実情」と言います。ワクチン接種が進み、10月には緊急事態宣言も解除。徐々に規制が緩和され、街にも人が増え始めました。「デルタ株」の流行で若者にも感染が広がった今年夏の現状を踏まえ、男子生徒は「感染者が少ない今だからこそ、次の感染爆発に備えてほしい」と訴えています。男子生徒に思いを聞きました。

コロナ不安で休んでも、出席にも欠席にもならない

ー署名活動のきっかけは?

「デルタ株の流行で今年夏に10代以下の若者にも多く感染者が出ました。でも、友人たちのインスタグラムを見ていると、緊急事態宣言中にもかかわらず夏休みにテーマパークに遊びに行ったり、県外へ旅行したりしている人が多くいました。2学期が始まったら当然感染者が増えるだろうなと不安になり、自宅にいながらオンラインで授業を受けられないか、学校や県の教育委員会、文部科学省や法務省にまで問い合わせました」

「しかし、コロナ不安で学校を休んだ場合には、欠席にならない代わりに『出席停止・忌引きなどの日数』などとして扱われ、出席にならないという返事でした。自宅にいながらも質問などのやりとりできる『本当のオンライン授業』を進め、受講者を出席扱いにしてもらいたい。そうすることで、対面かオンラインかを生徒が選べるようになるのではと思い、8月21日からネット上の署名サイト『Change.org』で署名活動を始めました」

授業の生配信なし プリントさえ送られてこない科目も

ー学校では「本当のオンライン授業」が行われていないのでしょうか?

「私の通っている学校は授業を生配信しているわけではありません。以前に家族が発熱したため念のため学校を休んだ際は、夕方に世界史の授業の映像と、国語の授業のスライドだけが送られてきただけでした。プリントさえ送られてこない科目もありました。授業の映像といっても、ただの垂れ流し。もちろん質問もできず、授業とは到底言えないと感じました。VOD(ビデオ・オン・デマンド)みたいなものです」

「欠席扱いではないので、頑張り次第では単位は取得できると説明されましたが、結果的に授業らしい授業を受けられなければ、単位は落とすことになりますよね。単位を取るか、命を取るか。大学進学を考えているので、命を削ってでも、仕方なく登校を続けています」

―1万2千人を超える署名が集まったことをどう受け止めていますか?

「8月末に新聞報道されて、ネットで一気に拡散したようです。子育て中の女性からの賛同も多く、『子どもを危険にさらされているのは怖い』『学校は去年となんら対策が変わっていない』『この1年間何をしてきたのだ』などといった声をいただき、大変共感しました。というか、私の学校では今は教室の窓もあまり開けられていないので、対策は去年以下です」

「命守ることを優先したい」

―目標の署名数はありますか?

「冬には必ず第6波が来ると思います。オンライン授業と対面授業を選べる自治体もあると聞きました。『本当のオンライン授業』が始まるまで、署名は続けたいと思っています」

「高校は通学時間に1時間かかるのは、ざらです。オンライン授業は睡眠の質の向上や、通学による無駄な時間を削ることができるといったメリットもありますが、友達同士のコミュニケーションが減るといったデメリットもあることは事実です。私の場合、母親が医療従事者のため、もし私が感染したらたくさんの人に迷惑をかけます。今は家族や自分の命を守ることを最優先にしたいです」

     ◇    ◇

男子学生は通常ならバスで登校していますが、満席のバスを利用するのをおそれて、朝は親に車で送ってもらい、帰りは歩いて帰っているといいます。

コロナへの対応に限らず、多様性を認め合う時代です。より多くの選択が可能になる社会になればいいなと思います。

署名活動を行っているChange.orgのサイト

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