不登校の児童生徒が増加する中、フリースクールなど民間施設を利用する家庭向けに経済的支援を行う自治体が増えている。京都府内は2市とまだ少ないが、滋賀県内は11市町と全体の過半数に達した。東近江市長のフリースクールや不登校に関する不適切発言から今月で1年たったのを機に、各市町の補助制度の状況をまとめた。
不登校支援を巡っては、学校以外での多様な学びの重要性を記した教育機会確保法が2017年に施行された。文部科学省は、教育委員会や学校と民間団体との密接な連携も求める。
ただ、公立小中なら授業料や教科書代は無料だが、フリースクールの授業料は平均で月3万3千円(文部科学省調べ)かかるという。そのためフリースクール利用の補助は、不登校の小中学生の居場所や学習機会の確保、家庭の経済的負担の緩和などを目的に、府内では23年度に亀岡市が、滋賀県内では21年度に草津市がそれぞれ初めて導入した。
一方、不登校支援をテーマにした昨年10月の滋賀県の首長会議で、東近江市の小椋正清市長が「文科省がフリースクールの存在を認めたことにがくぜんとした。国家の根幹を崩しかねない」などと発言。全国的な問題となり、市長は後に謝罪した。
その東近江市を含め、フリースクール利用補助は24年度から新たに舞鶴市、長浜市、守山市、湖南市、多賀町の6市町が開始。東近江市教委は導入の理由について「不登校の児童生徒の状況を見て対応を考えた」とし、小椋市長の発言は関係ないという。ただ導入自治体の中には「(市長発言が)議論が進むきっかけの一つになった」という声もある。
京都と滋賀13市町の補助額の上限は月額5千~4万円と差があり、対象者や対象経費など条件もさまざま。亀岡市はオンラインのフリースクールを含む市内外の6施設を利用する小中学生に月1万円を上限に補助している。滋賀県は7月から、市町と連携してフリースクールを利用する家庭向けに実態調査を行い、アンケートの回答者には協力費として月5千円を支給している(大津市は不参加)。
運営基盤の脆弱(ぜいじゃく)なフリースクールが多い中、近江八幡市は24年度から県内で初めて施設への運営補助も開始。市長の認定を受け、スタッフが複数いるなどの条件を満たした市内の施設に年200万円を上限に交付する制度で、フリースクールのSince(シンス)はその一つ。麻生知宏代表理事(26)は「家賃や教材費、人件費などに活用し、運営の持続可能性という点でとても大きい。子どもがどこに住んでいても安心して質の高い施設を利用できるためにも運営補助は必要」と訴える。
運営補助を求める施設関係者の動きは他の自治体でもあるが、未導入の理由として「公の支配に属さない教育事業に公金を支出してはならない」とする憲法89条を挙げる自治体が複数あった。「国や県が議論を深めて方向性を示してほしい」との声も出た。