実は不思議が多いトウモロコシは「謎の植物」 隕石にくっついて宇宙からやってきた…という説もあるほど

ドクター備忘録

松本 浩彦 松本 浩彦

 世界で最も多く作られている農作物はコムギでもイネでも大豆でもありません。トウモロコシです。ところが植物学者の間では、トウモロコシは「謎の植物」なのです。隕石にくっついて宇宙からやってきた、という説まであります。

 トウモロコシには明確な祖先となる野生植物が見当たりません。イネは野生イネ、コムギはタルホコムギやエンマコムギという祖先が判明しているのに、トウモロコシだけは、どこからやってきたのか分からないのです。

 イネ科植物は、一つの花の中に雄シベと雌シベがあります。ところが、同じイネ科のトウモロコシは、茎の先端に雄花が咲き、茎の中ほどに雌花ができます。この雌花の部分が、私たちが食べているトウモロコシです。雌花の皮を剝くと黄色い粒が並んでいます。この粒は実は種子です。

 これも不思議な話で、植物は種子を散布するために様々な工夫をしています。タンポポは綿毛で種子を飛ばすし、オナモミは人の衣服に種子をくっつける。ところが、トウモロコシは、散布しなければならない種子を皮で包んでいます。

 皮に包まれていて、さらに皮を剝いて種を剝き出しにしても、種子は自然に落ちることはありません。種子を落とすことができなければ、植物は子孫を残すことができない。つまり、トウモロコシは人間の助けなしには育つことができないのです。

 初めから食べられることを前提に作られたかのような植物。そのためトウモロコシは、宇宙人が古代人に食糧として授けた、と噂されているのです。マヤ文明の伝説では、神々がトウモロコシを練って、人間を創造したと伝えられています。トウモロコシが先で、人間が後なんですって。ちょっとロマンチックじゃないですか。

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