「これは鴨川?」フランス人も見間違うセーヌ川の姿 なぜ?京都在住フランス人に聞いた

天草 愛理 天草 愛理

 「パリのセーヌ川が京都の鴨川みたいになってた」。パリ市内を貫くセーヌ川のほとりに人々が距離を取り腰を下ろす様子を収めた写真が、ツイッター上で注目を集めた。

 写真の投稿主は「TIPAのフランス日記」さん(@tipafrance)。京都市内を流れる鴨川の河岸は「カップルが等間隔に座る」という法則で有名だが、確かによく似ている。実は姉妹都市のパリ市と京都市。セーヌ川と鴨川にどんな共通点があるか、フランス政府公式機関「アンスティチュ・フランセ関西」(旧関西日仏学館、京都市左京区)に尋ねた。

 アンスティチュ・フランセ関西は、フランス語講座の開講やアートイベントの実施などでフランスの文化の発信に取り組んでいる。パリ市と京都市の姉妹都市提携の折りには橋渡し役を担った経緯がある。

 今回、パリ市やセーヌ川について教えてくれたのはフランス出身の専任講師ミシェル・ダヴィさん(50)。京都市に計13年住んでいるそうで、自身を「京都人だと思っている」とちゃめっ気たっぷりに言う。

 大阪府に住んでいた時期もあったが、仕事で京都市を訪れた際に快適さを感じ、引っ越した。お気に入りは鴨川。「周りの山も好きです。街と自然がうまく混ざっていてゆったりしている」

 ツイッター上で話題となったセーヌ川の写真を見せると、ダヴィさんに「これは鴨川?」と質問された。セーヌ川だと伝えると、人々が離れて座る様子を「新型コロナがはやっているせいでしょうか」と推察した。

 セーヌ川は全長780キロメートルと長大で、河岸の一部は世界遺産に登録されている。2024年開催予定のパリ五輪で開会式の会場に利用する計画もあり、ダヴィさんは「フランスの一つのシンボル」と評する。

 また、映画の舞台に選ばれたり、多くの外国人観光客が訪れたりするところでもある。ダヴィさんによると、パリ市はセーヌ川を人々が集う場所にしようと工夫を凝らしているそうだ。

 その一つがパリ市の夏の恒例企画「パリ・プラージュ」。「プラージュ」は、フランス語で「砂浜」を意味し、その名の通り、セーヌ川のほとりに人工ビーチを作り出してしまうという何とも大胆な取り組みだ。

 パリ・プラージュの写真を見てみると、河岸にパラソルがずらりと並び、水着姿の人々が川べりに腰掛けたりビーチチェアで日光浴したりしてバカンス気分を楽しんでいた。ビーチバレーで遊ぶ人もいるらしい。

 ダヴィさんはセーヌ川と鴨川について「似ているのは、市民が散歩したりジョギングしたり、ゆっくりと時間を過ごしたりするところくらいですね」と語る。家族やカップルが集まる点も類似しているが、事情が異なるところもある。

 セーヌ川のほとりは石畳の部分が多いうえに、パリ市内は夏も湿度が低く、昼夜の寒暖差が激しいため、鴨川のように長時間座って話すことは難しいそうだ。ダヴィさんは「そんなフランス人がいたら軽い気持ちじゃないと思う」とジョークを飛ばした。

 では、パリ市と京都市はどうか。「市民が自分のまちを好きで誇りを持っているところが似ています」とダヴィさんは指摘する。京都市同様、パリ市も独自の景観や文化を非常に大切にしているという。

 また、京都市は大学や学生の数の多さから「学生のまち」と称されているが、パリ市やその近郊も大学や高等専門教育機関「グランゼコール」といった教育施設がいくつもあり、若者がたくさん住んでいる。

 ダヴィさんは、地球温暖化対策の国際的枠組み「京都議定書」と「パリ協定」を例に挙げ「世界的に影響を与えられる都市でありたいと考え、アピールに関心があるところも似ていると思う」と話した。

 パリ市に住んでいた経験から取材に対応してくれたダヴィさんだが、実は出身はフランス南西部のボルドー市だそうだ。「ボルドーが一番美しいまち」と胸を張ったダヴィさん。やはりふるさとは特別なようだ。

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