死んだんじゃなかったの?…「ただいま」と言わんばかりにやってきた猫は“亡くなったあの子”にソックリ!

ふじかわ 陽子 ふじかわ 陽子

虹の橋のたもとに旅立った猫に、戻ってきてもらいたい。毛皮を着替えて、少し休んだらまたうちに。そう願う猫飼いは多いものです。でも、それは叶わないとも知っています。そんな叶わない夢が現実(?)となったご家族が、大阪府におられます。I家です。

I家では元々、男の子の黒猫と暮らしていました。当時小学生だった次女が堤防で拾ってきた猫で、名前はムーン。家族皆でとても可愛がっていたのですが、猫白血病ウイルス感染症を発症。不幸なことに5歳でこの世を去ります。

この時のことをI家のお父さんはこう語ります。

「ムーンが死んでから、家の中はまるで灯が消えたかのようになりました。ムーンがいつもいた場所を見ては涙を流し、ムーンに似た猫を目にしては泣く毎日です」

それから時は流れ、ムーンくんを拾ってきた次女は20歳に。その彼女が、再び運命の出会いを果たします。のちにI家2匹目の猫となる、キジトラのチャコくんです。

場所は近所のスーパーの駐車場。次女の姿を見るなり一目散に駆け寄ってきて、そのまま家までついてきたのだそう。堂々と家の中まで入り、慣れた様子でリビングの座椅子にゴロン。その座椅子は、ムーンくんのお気に入りのものでした。

これを見たお父さん、大して驚きません。「やっと帰ってきたか」と思ったとのこと。ムーンくんは必ず毛皮を着替えて戻ってきてくれると信じていたのです。ちょっと時間がかかったのは、次女が大きくなっていたからだろうと。

「チャコ」と名付けられたこの子は、ムーンくんとほぼ同時期に生まれた猫だと病院で分かります。ムーンくんが生きていれば10歳。チャコくんもこの時、推定10歳。ますます運命を感じました。

もうしなくて良いと思っていた、外出時の電気点けっぱなしも再開です。笑顔の灯りも点きっぱなし。チャコくんの写真を眺めながらお父さんは言います。

「もしかすると、チャコはムーンの生まれ変わりではないかもしれません。でも、ムーンが何かしらチャコに託したはずです。そうじゃないと説明がつかないことが多いんです」

チャコくんのお気に入りの場所は、すべてムーンくんと同じ。ムーンくんに「乗らないでね」とお願いしていた場所には、チャコくんも乗りません。何より、チャコくんは最初から家の間取りを知っているかのよう。寝る時は3階へ、帰宅したお父さんはまず1階。

I家の人たちは、チャコくんにムーンくんの分まで愛情を惜しみなく注ぎます。チャコくんもその愛情に応え、存分に家族に甘えました。

お父さんが胡坐をかくと、ムーンくんと同じようにチャコくんもお膝の中にスポッ。台所に立つお母さんを後ろから見守るのも、ムーンくんと同じくチャコくんの役目。

違うのは、チャコくんがちゅーる嫌いというぐらい。猫にしては珍しいですね。

そんな日々も永遠ではありません。チャコくんは寄る年波に抗えず、老衰でこの世を去りました。今から3年前のことです。およそ16歳、猫にしては大往生ではないでしょうか。家族に見守られ、虹の橋のたもとに向かいました。

チャコくんを見送ったお父さんは、今こう考えているようです。

「ムーンの時とは違い、チャコは精一杯介護したので悔いは残っていません。高齢でしたし、覚悟もできていました。今は、今度はどんな毛皮を着て帰ってきてくれるか楽しみにしています」

ムーンくんとチャコくん、2匹の猫と運命の出会いをした次女は、つい先日お子さんを出産したのだそう。ムーンくんとチャコくんを待つI家の人が増えました。

今やお祖父ちゃんになったお父さん、笑いながらこう言います。

「孫のアレルギー検査が終わってから、帰ってきてほしいな。実は次女、猫アレルギーなんです。遺伝しているかもしれないから」

次の猫さん、今度はアレルギーが出にくい長毛か無毛が良いみたいですよ!

悲しみを喜びに、喜びを思い出に。2匹の猫との暮らしは、実に多くのものをI家にもたらしてくれたようです。

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