京都市の市営地下鉄は、烏丸線と東西線の2路線があるが、東西線で当初計画された洛西ニュータウン(西京区)への延伸はいつまでたっても実現せず、塩漬け状態になっている。「文化財が埋まっているから」などとやゆもされるが、関西初、全国2番目の“地下鉄”は、実を言うと京都市で誕生しているのだ。
阪急西院-大宮間の約2キロで、開通は1931(昭和6年)。当時は京阪電気鉄道の運営で西院駅南西の地下出入り口には太田光凞社長筆の「天人併其功」(天と人の力が合わさって成し遂げた)と記された銘板が掲げられている。堅固な地盤や大量の地下水に悩まされる難工事だった。
阪急電鉄によると、両駅の柱やホームの構造は建設当時からほぼ変わっておらず、昭和初期の雰囲気を感じることができる。2000年に、土木学会による「選奨土木遺産」に認定された。
ただ遺産には困った一面も。近年の地下駅は、列車が出入りする際の「列車風」を逃がす構造にするのが一般的だが、ホーム幅の狭い両駅には、その機能がほとんどない。特に特急電車の通過時には地上の改札口付近まで強風が吹く。
西院駅では階段付近で「強い風が吹きますので、手すりをお持ちください」とのアナウンスが流れる。バリアフリー工事で通路が狭くなっていたこともあり、昨年まで注意喚起の紙も張り出されていた。
難工事の連続で、強風対策まで手が回らなかったのだろう。それは致し方ない。利用客の皆さまはお気をつけ下さい。