宇宙最強を殴り踏みつけた唯一の日本人俳優・丞威、単身中国武者修行『燃えよデブゴン』

石井 隼人 石井 隼人

しかし肉弾戦は危険との隣合わせでもあった。「日本の場合は撮影前に練習する日数があることが多いけれど、この現場ではアクションの殺陣などは撮影当日に決まることが多かった。しかもドニーさんは常によりよいアクションを求めるので、直前まで何をどう撮るのかさえわからなかった」とフレキシブルさを求められた。

アクシデントもあった。バトルシーンでスタントマンの鋭いパンチが丞威のアゴにクリーンヒット。6針も縫う大怪我に。「撮影スケジュールがタイトになったときにスタントマンの方と意思の疎通が上手くとれておらず、殺陣とは違う手がきた。顎を思い切り殴られて血がダラダラで」と流血騒ぎ。

そのまま緊急病院に駆け込むも「“緊急”のはずなのに『先生は今家にいて不在です』と言われました。しかも僕は役衣装のままで病院に行ったので、首にタトゥ―は入っているし、傷だらけメイクだし、顎は実際に切れているし。病院の方々には喧嘩したジャパニーズ・ヤクザだと思われたはず」と苦笑い。

二軒目の病院で手当てをしてもらい事なきを得たが、今では勲章のような思い出だ。なぜならば丞威に戸惑いはなかったからだ。「それなりの覚悟と準備をしての単身中国撮影。僕は予定調和にならない現場が結構好き。日本の場合は時間と効率を重視しながら撮影するスタイルが多いけれど、今回の現場は『よりよい作品を作りたい』という熱量が凄かった。その分、時間もお金もかかります。いい意味で上下関係がなく、下っ端のスタッフがあたかも自分がトップであるかのように思い切って意見を言う。そういう現場は活気があって楽しい」。まさに所変われば品変わるだ。

この貴重な経験を経て、丞威は事務所を独立してフリーランスになった。クラウドファンディングで集めた資金をもとに、世界を股にかける国際的スターを目指す。「ドニーさんとの共演で得たもの、それは大物を目の前にしても自分を主張することの大事さです。宇宙一のドニーさんと対峙するのはこれまでの人生で一番のミッションだったし、それに対応できるか否かという自分に対するテストでもあった。若いうちに貴重な経験ができたのは、今後の財産になるはずです」。そのテストの結果は?最高得点に違いない。

おすすめニュース

気になるキーワード

新着ニュース