兵庫県香美町の町立幼稚園で、「教諭が運動会に向けた練習に取り組む園児の頑張りを点数で評価し、手の甲に書き込んだ」との情報が、神戸新聞の双方向型報道「スクープラボ」に寄せられた。指導法に疑問を抱いた保護者が説明を求めると、教諭や町教育委員会は「不適切だった」と認め、謝罪した。しかし、この問題をきっかけに、保護者の子どもは今も登園できずにいる。指導の何が問題だったのか。関係者らを取材した。(金海隆至)
神戸新聞が情報公開請求で入手した記録や町教委の説明によると、幼稚園はいわゆる年長の1年保育で、計10人が一つのクラスで学ぶ。担任教諭は運動会前の9月7~11日のうちの数日、園児一人一人の手の甲に、練習での頑張りを評価した点数をフェルトペンで大きく記入。やる気を持たせることが目的で、13日の本番後には全員に100点をつけるつもりだったという。
「なぜ○○ちゃんは89点で、私は88点なの?」。同10日、情報を寄せた保護者の子どもは帰宅中、他の園児より低い点数への疑問を母親にぶつけた。母親は「口ぶりが悔しげで、傷ついていると感じた」と話す。
担任教諭は定年近いベテランで、着任翌年の2014年から同じ指導を続けていたという。両親は運動会後に会って評価の意図や採点基準の説明を求めたが、納得のいく答えは得られなかった。隣接する小学校の校長が兼務する園長も、指導の実態を把握していなかった。
報告を受けた町教委は9月下旬、両親を訪ねて謝罪。教諭が寄せた回答文書には「私の主観で子どもが頑張れると思う点数を書いており、明確な基準はなかった」「上下をつけようと考えてしたつもりはない」などと記されていた。
香美町の藤原健一教育長は「意欲を高めようとする目的に対し、手段が不適切だった。肌に点数を書くという指導は許されるものではなかった」とする。