自転車の前後に取り付ける幼児座席。実はこれ、道路交通法ではほとんどの自治体で「乗れるのは六歳未満」と規定されているのをご存じですか。「五歳の長男がいるが、誕生日が来たら乗せられない」(名古屋市守山区、パート女性、四十二歳)。「Your Scoop〜みんなの取材班(ユースク)」に届いた悩みにこたえ、意外な「六歳の壁」について調べてみた。
道交法によると、自転車の乗車人員や積載重量の制限は各都道府県の公安委員会が定めることになっている。女性が住む愛知県の場合、原則として二人、三人乗りは禁止。乗せることが許されるのは十六歳以上が運転し、幼児が「六歳未満」の場合のみで、違反すると二万円以下の罰金、科料の規定もある。
規定を厳格に守ると困るのは幼い子どもを抱える親たち。例えば、歩く能力が未発達な園児を自転車で送り迎えしようと思っても、年長クラスのわが子が六歳の誕生日を迎えると法令違反になってしまう。
取材班に悩みを寄せた女性はニュースでこの規定を知った。自宅から一キロほど離れた幼稚園に長男を通わせているが、六歳になる十一月からは徒歩か車に変えるつもりだ。「自転車の方が子どもと会話しやすいけど…。子どもを乗せられないと本当に困る家庭もあるはず」と気に掛ける。
六歳の壁は転倒防止など安全上の配慮とみられるが、「六歳」で区切る明確な根拠はない。幼児座席の性能も向上し、製品安全協会(東京都)は今年三月、自転車用幼児座席の安全基準(SG基準)を「六歳未満」から「小学校に入るまで」に改定。担当者は「製品の設計上の基準は体重。対象の範囲が変わっても大きな影響はない」と話す。
親たちの願いに押される格好で、規定を見直す自治体も出始めている。
大分県は四月、全国で初めて「六歳未満」を「小学校に入るまで」に改めた。大分県警によると旧規定下でも県内で実際に取り締まった事例は無く、昨冬、交通部内の会議で「安全運転上問題ないなら変更してはどうか」との提案があったという。中部地方でも六月に長野県が、九月に福井県が改正に踏み切った。
インターネット上では、全国規模での改正を求める署名活動が四月から始まった。呼び掛け人で、双子用自転車の企画開発に取り組む「ふたごじてんしゃ」(兵庫県尼崎市)の中原美智子社長(49)は数年前から実情に見合わない規定に疑問を抱き、講演会などで指摘してきた。子育て世代から相談も寄せられていたといい「学童の送り迎えとか六歳以上でも使いたい家庭だってある。実情に合ったルールを作れるように声を上げ続けたい」と話した。
(中日新聞・佐々木 香理)
▼どなどな探検隊 パートナー協定について
まいどなニュースはオンデマンド調査報道の充実に向けて、北海道新聞、東奥日報、岩手日報、河北新報、東京新聞、新潟日報、信濃毎日新聞、中日新聞東海本社、福井新聞、中日新聞、京都新聞、神戸新聞、中国新聞、徳島新聞、テレビ西日本、エフエム福岡、琉球新報と連携協定を結んでいます。 「どなどな探検隊」に寄せられる取材リクエストのうち、取材対象地域外に関するものなどは各社と情報を共有。北海道新聞の「みんなで探る ぶんぶん特報班」、 東奥日報の「あなたの声から『フカボリ』取材班」、 岩手日報の「特命記者-あなたの疑問、徹底解明-」、 河北新報の「読者とともに 特別報道室」、 東京新聞の「ニュースあなた発」、 新潟日報の「もっと あなたに―特別報道班」、信濃毎日新聞の「声のチカラ」、 中日新聞東海本社の「Your Scoop みんなの『?』取材班」、福井新聞の「みんなで発掘 ふくい特報班」、 中日新聞の「Your Scoop(ユースク)」、京都新聞の「読者に応える」、神戸新聞の「スクープラボ」、 中国新聞の「こちら編集局です あなたの声から」、 徳島新聞の「あなたとともに~こちら特報班」、 西日本新聞の「あなたの特命取材班」、テレビ西日本の「福岡NEWSファイルCUBE」、 琉球新報の「りゅうちゃんねる~あなたの疑問に応えます」の記事を相互交換し、新聞や自社のウェブサイトに随時掲載します。